「どうしよう、リリー!血が届かないみたいなの!」

「落ち着いて、アリア!…一体どうしたの?」

「多分…クランの本家が襲われたの…っ、いつもの輸血パックは、そこからしか入手できないものなのよ!」

「………」


「このままじゃ、無意識に私…っ」


昔、家に溜めていた血が無くなってしまったとき、一族全員で無意識に人里を襲ってしまった事が脳裏に浮かんできた。あの時程、自分を怨んだ事はなかった。錆び付いた鉄の匂い、辺りは全部赤い紅い緋い。



「アリア」


堅い表情のリリーが私にポツリと言った。


「私の、血をあげるわ」




* * *



薄暗い教室。私達は怪しまれないように別々にそこまで向かいおちあった。黒いマントが闇と私、リリーを同化させる。

「ねえ、本当にいいの?」

「何度もそれを言うのね――貴女のためよ?いいに決まってるわ」


優しく微笑む彼女。フードを外して赤い髪がサラリと溢れる。私達は近寄った。くいっとリリーが首筋を露にした。白い大理石のような滑らかな素肌。思わずゴクリと喉が鳴る。頭に何かが引っ掛かったが今は、この喉の渇きを満たすしかない。そして、




リリーの首筋に牙を突きたてた。



甘い香りが鼻孔満たし口の中に広がる。上物上物、と脳がもっとと求める。うっ、と彼女が苦しそうな酔いそうな表情になるが、今人間のような感情をなくした吸血鬼の私にとってはそんなの関係なかった。



「ステューピファイ!」


目の端が赤い光を捉えた。顔を上げると失神呪文が真っ直ぐ私に向かってきている。リリーが咄嗟の判断で私を外に突き飛ばした。落ちる前に見えたのは見開かれた緑色の瞳と眼鏡の少年。ガラスと共に身体が重力に従い加速しながら地に近づいてゆく。ある程度の所で私は、蝙蝠になって女子寮の自室に向かった。窓から入ると真っ青な顔をしたリリーがベット際に座り込んでいた。元に戻ると涙をぽろぽろ溢しながら私に抱きついた。


「リリー、大丈夫だった?」

「嗚呼アリア!貴女こそ平気?あのポッター達、着いてきてたのよ!」

「…厄介ね、どうにかしなきゃ」


「そうだわ、私にいい考えがあるの……」


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