まるで白いキャンバスに赤い絵の具が飛び散ったようだった。
彼に似合うように白い部屋に白い服、家具もなにもかも―――あたしの服も、白に統一してあげたのに。
「白蘭さん、痛いですか?」
「っ、こんなことして、何が楽しいんだいなまえチャン」
「ふふっ、楽しい…ですか?」
楽しくなんか、ないよ。だってこれは罰なのだから。それを楽しむなんて、そんな人は"狂って"いる。
嗚呼、あたしがそんな事言えた義理じゃない事は充分承知済み。でも他人にあたしなりの愛情表現をとやかく言われる筋合いはない。
こんなにも上手くいくなんて思ってもいなかった。
でも白蘭さんがイケナイの。あたしを惑わせたんだもの。責任くらい、取ってもらわないとでしょ?
じわりと白が赤に塗り潰される景色は壮観だった。あたし色に染まってゆく…こんなに嬉しいことってないわ。
「――なまえっ!?なんてことしてるんだい!」
「あ、ボスだー」
「っ!?白蘭は無事か」
「…遅いよ綱吉クン」
さすがに安心したのか白蘭さんは顔を痛みで歪ませた。今まで我慢してたから、か…。色の変わった足からはどくどくと血が流れる。……あーせっかくの綺麗な両脚をダメにしちゃったみたい。少し痛めつけただけなのになー。
「なまえ、なんでこんなことを…」
「ねー綱吉クン、ナニコノコ」
蔑んだ声と視線と瞳と表情…あたしは身体が熱くなるのを感じた。
「その言い方はなによ!」
銃口を頭へ向けるとボスと部下たちが騒ぎはじめた。白蘭さんはフッと笑って瞳を閉じた。まるで早くこの暮らしから抜け出したいかのように。
死を欲する白い悪魔
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