桜がやっと咲き始め、私と綱吉は放課後の校舎からそれを眺めていた。今日で2-Aとはお別れだ。4月からは受験生になる。



「綱吉はどこの大学行くの?」


「ん、んー…行かない」


「えっ、じゃあもう働くの!?」


びっくりした。なんだかんだ高校に進学したんだから大学にも行くと思っていた。綱吉は困ったような顔をしながら桜を眺めていた。


「……働く、って言えばそうかな」


「よく、分からないけど…頑張らなきゃね」


「っ、あ、美々はどうすんの?」


「私は幼稚園の先生なんてどうかなーって」



小さい頃からいくつかあった候補の1つ。ほわわんとだけど、将来的に考えてもいいかと思っている。少しだけ綱吉に近寄ってみると、急に肩が重くなった。綱吉のハニーブラウンの髪がサラサラと首筋にあたる。


「くすぐったい、よー」


「美々を堪能ちゅー」


くんくんと嗅がれて身を捩らせると腰に腕が回ってきた。向き合いっこになる私たちの身体。


「ちょ、綱吉…ツナ!」


「え、キスだめなの?」


「が、学校だから…」



手で胸を押し返したけどさすが男の子。私の力なんて小さすぎるのか、もう顔が、近、い!



「ねぇ君たち、並高で群れてるわけ?」


「ヒ、ヒバリさん!」


「ひひひ雲雀さんごめんなさい!」


「…………草食動物の沢田より僕をえら――――」


「だっ、ダメですーーーー!」


綱吉は大きな声で雲雀さんに向かって叫びながら私を小脇に抱えて猛スピードで教室から逃走した。え、ここは普通お姫様抱っこでしょ。そう言ったら「走りにくいから」とそれだけ返された。



「ワォ、沢田綱吉は肉食動物に成り上がったようだね」


雲雀恭弥は1人誰も居ない教室で楽しそうに笑った。指にはキラリと光る指輪。ソレをなぞりながら後1年で並盛の平和を築かなけばとまた巡回を再開させた。



 

 


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