雲雀さんは「焦らないでゆっくりお決め、でも一緒にいてよ」と真っ直ぐにひたりと私を見つめた。私は頷くしかなかった。綱吉の顔がよぎったけど、今の私は何かに縋りたかった。ごめんね雲雀さん、彼を忘れるために貴方を利用してしまいそうです。雲雀さんが屋上から消えた後、私は涙が一筋流れた。
「美々、この書類よろしく」
「美化委員会ね?分かった」
私はあれから恭弥くんの風紀委員会のお手伝いをしている。ギクシャクした空気はないと言ったら嘘になる。でも恭弥くんといると落ち着いた。いつの間にか私は"雲雀さん"から"恭弥"くんと呼ぶようになった。
「早くね、戻ってきたら―――」
「コーヒー、でしょ」
フッと笑って恭弥くんはまた書類に目を落とした。応接室を出て、美化委員会の教室に向かいながら書類を眺めてみる。小さく綺麗に整った文字が綴られている。彼とはち――駄目よ駄目、考えちゃ駄目。頭を振って今考えかけた事を振り払う。前を見つめなきゃ…。
恭弥くんのお使いを終えて、自分の教室の前を通って応接室に行こうとしたら誰かが叫ぶ声がした。何処かで聞いた、よく聞いてた、大好きだった声――――。
「じゃあどうすればいいんだよ!」
「諦めろ」
「でも俺はっ、美々を愛してるんだ!」
綱吉だった。
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