「千年公ーっ!」


「グフッ…v!   ったラ落ち着きなサイ」


方舟の中の一番高い塔の一番上の部屋にいた千年伯爵に向かって幼さを少し残した少女が抱きついた。

少女は――もう17歳くらいだが――大きな瞳をキラキラさせて千年伯爵にさらに抱き付き、笑っていた。


「まだロードは帰ってこないの?」


「えぇ、14番目とお散歩デスヨv」


「ぶうー!私も一緒に行けばよかった!」


千年公は笑うだけ、私も笑うだけ。足先に繋がっている鎖を視界に入れないようにして私は千年公と窓の外を見た。


「真っ白い家ばっか…綺麗だね!」


「そうデスネ………オヤ?もうロードが帰ってきたみたいデスヨ?」


バッと振り返ると大きな音を立てて急に現れた扉が開く。中から飛び出てきたのは勿論、ロードだった


「千年公!    ーーーーーっ!!」


「アラ!能力を変な事に使ってはイケマセン!」


「いいのぉ、ボクの勝手だしぃ」


「ロードっ!つまらなかったよぉ、遊ぼ遊ぼあそぼ!、……あ、お腹すいちゃった!」


「ご飯にしようか」


ふんわりと笑った14番目がそう言った。千年公はメイド(のアクマ)に食事の準備をするように命令した。ロードは他の家族も呼んで来ると言って部屋を飛び出した。


「    ごめんね…足枷、いつも外してあげたいんだけど…」


14番目の優しい声が私だけに向けられる。ドキドキする胸を押さえつけて私は持てる力を尽くして笑顔を作った。


「大丈夫だよ!千年公にロード、14番目やみんなだって居るもん!」


カチャリ、と音が響いて鎖の拘束が解かれる。紳士のように差し出される手。


「さあ、お食事と参りましょうか…姫君」


「フフッ…そうですわね」


自らの手をそっと置き、2人は部屋を後にした。


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