苛々しながら食堂を後にする。そこには2人並んで食事をとる無表情のシャオリーと嬉しそうなアレン。赤い痕が双方の首筋にある。……きっとそういう事をしたんだ。そう思うとさらに胃がムカムカして食べる気も失せた。仕方ねぇ、ジジィに言われた文献でも頭に入れるか。そう思って書庫に向かった。
* * *
「あらラビ、何か調べ物?」
「ちょっと覚えものさ、リナリーは?」
「兄さんに頼まれて本を探してるの」
既に彼女の手元には数冊の本、俺は目当ての本を持って近くの椅子に座った。開いたページに目を落とすとカタンと音がして、顔を上げると隣の椅子にリナリーが座っていた。……今イライラしてるんさ、来ないでほしかんたんだけどなー…。そんな事を思っていると苛ついてるわね、と指摘された。
「なんでそんな事言うんさ〜?」
「私も同じキモチだからよ」
「はあ?」
「苛つく苛つく苛つく苛つく苛つく苛つくの!」
笑顔のまま苛つくと連呼するリナリー。手にする本を掴む手に力が入りミシリと音がなる。う、うそだろ…っ。
「リ、リナリー…?」
「シャオリーはアレン君ばっか、私に構ってくれないわ、そんなの酷いわ私はシャオリーの事を誰よりもだぁい好きなのに気付いてくれないし見向きもされてないのに、アレン君は、アレン君はっ!」
「………」
リナリーはそこでハッとして慌てて深呼吸した。どうやら我を失っていたらしい。それから真っ直ぐ俺を見てきた。
「羨ましいのよね、アレン君が」
「そんな、事ないさ…」
「嘘よ、私と同じキモチじゃない」
そういえば。いつもシャオリーは俺に見向きもしなかった。かっこいいのに。見るたびにあの冷めた瞳で馬鹿にされたように見つめられているとさえ思った。ブックマンに心は要らない。無理さ、シャオリーは麻薬みたいなもん、一度捕らわれたら依存してしまう。そうか、俺はシャオリーが好きなんだ。
俺は気付かない、リナリーが更に憎悪に燃えていた事を。