18年前――――



「おにいちゃん、びゃくらんおにいちゃん」

「どうしたの美々?」


「またユウキくんがね、美々にいじわるしてくるの」


青色のスモッグの裾をにぎりしめて、大きな涙をぽろぽろと頬を伝わせる。よしよしと白い髪を撫でると小さなてのひらが僕の背中に回ってくる。おにいちゃんおにいちゃん、と顔を押し付ける美々は可愛かった。


「僕が守ってあげるよ」


「ずっとおにいちゃんがまもってくれるの?」


「もちろん、ずーーっとだよ」


涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔でにっこりと美々は笑った。


「びゃくらんおにいちゃんだいすき!」



* * *



「懐かしい夢を見たなー」



美々が居なくなって広くなったベッドで僕は目覚めた。美々の夢を見れて嬉しくはあるけど、肝心の本人が居ないなんて、つまらなすぎる。チョイスになれば美々に会える、だから大丈夫だ。そう言い聞かせた。彼女はきっとこの事を覚えてないんだ。僕は大好きな、否愛している彼女の為に、新しい世界を創るんだと頭の中で再度確認した。他のもの、人間はイラナイ。そう僕と、美々。それだけで充分だ。



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