だらりと流れる自分の白い肌と対称とも言える液体を傍観者のように、他人事のように眺めていた。後からやってくる鈍い痛み、ずきずきと神経を伝って脳まで伝わり私に「痛い」を告げていた。…でもまあ、我慢できなくもない。ふと気が付くと笑みを堪えている自分が居ることに気付いた。


「…貴方は、このままでいいんですか」


水底から聞こえるように深く、小さな声が聞こえた。後ろを振り返ると白が目に映った。アレン、か……。微笑みを堪えきれずに私は傷付いた手の方を、敢えて見せ付ける形でアレンに手を振った。勿論、良い顔なんかせずに、困ったように私をじっと見つめてきた。――…彼はよく私を引き留めたがった。でも私と彼の歩む道は違えていて、一生懸命アレンが私に呼び掛けても私たちの間には分厚いベールがかかっているかのように聞こえづらく、もやもやとしか伝わらなかった。いや、聞こうとしてないだけなのだ。手を伸ばそうと思えば伸ばせた、ベールは柔らかいから剥ぎ取って傍に行く事もできた。でも私には手を伸ばすほどのご立派な自我はなくて、ベールも私と彼を交わらせたくないのか重く私の身体に絡みつくのだ。それが案外心地好くて、現状維持なのが正直楽で仕方がない。だから必死に呼びかけてくれる彼が滑稽で仕方なかった。


「私は、もう変わらないの」
「そんな事、言わないで下さい…人間なんてそんなものですから…っ」


分かってるなら、お願い私になんて優しさを分け与えないで。


その言葉もベールに吸い込まれて消えてしまう。おかげで涙もなかった事にされる。ぼんやりと白が霞んできた。向こうから、彼の白い髪とは正反対の色の腕が伸びてきた。その手は私を掴む事なくやはりベールに遮られた。何かを叫ぶ声。駄目だ、もう止めて…。




そこで、私は目を醒ました。




「…………どうかしたのか?」

「…ううん、なんでもないよ」

褐色の肌に身体を擦り寄せて、私は目をまた閉じて夢をシャットアウトした。いや、本当はまたその世界に戻りたいだけなのかもしれない。ふと夢の中と同じ愛おしい鈍い痛みが腕をゆっくりと走った気がした。



に反する行動をとる思念とまたそれを抑制自我





沈黙さまに。
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