任務が終わってホームへと帰る間に今年1番とも言えるくらい豪雪が降った。列車もなかなか進まず、宿に泊まることになったりして予定していた日程よりかなり遅れてしまった。ティムにはその事と小さな結晶――これが僕たちエクソシストと千年伯爵たちが戦う理由とでも言えるイノセンス――を運んで貰うために先に帰ってもらった。しんしんと降る雪は黒い団服をも白に変えて、もしかしたら人からは白い景色に白い僕は見えにくいのかもしれない。少し嘲笑を浮かべながらさくさくと降り積もった雪に足跡を刻みながら歩いた。僕の過去もこんな風に軌跡として残っているのだろう。この長い聖戦という歴史の中、僕はその中の一部として小さな存在だけなのだろうか。どくり、とイノセンスが反応した気がした。…アクマ?いや、目が反応していないということは…まるで僕の考えていた事を聞いていて嘲るかのようだ。そう、教団にとって必要なのはイノセンス、イノセンスを扱えるエクソシスト。ならエクソシストのアレン・ウォーカーは必要なのだろうか。僕じゃなくても、適合者なら彼らは喜んで受け入れるのだろう。しんしん。静けさに拍車がかかったようだ。人が周りを歩いていてもまるで自分だけしかいないように、孤独だった。否、己の中にもう1人居ることを忘れていた。ネア、奴は僕の身体を乗っ取ろうと隙を伺っている。そうしたらきっと、教団は僕を敵と見做して手を翻すようにすぐに、仲間に、いや仲間だったエクソシストに攻撃を命令するのだろう。細い糸の上を無理矢理歩いているくらい今の状態はいいものとは言えない。今にも堕ちてしまいそう、崩れ落ちていきそう。舞っている雪と同じ色の髪がふわりと揺れた。

ふと目の前に黒が目に入った。見覚えのある団服をアレンジして、胸元には赤いリボンが存在感を示していた。その身に合わない少し大きめの傘をさして、誰かを待っているようだった。目が、合った。


「―…アレン!!」

「美々…?どうしてここに…」


「遅いからに決まってるじゃん!」

ほんのちょっと、胸が暖かくなった。美々はそのままくるりと方向転換、歩き出した。振り返ってにこりと笑った。


「ほら、アレン置いてくよ!」

「ま、待ってください…!」



慌てて彼女の後を追いかけながら自然と笑みが零れた。――まだ、僕は人間で、エクソシストだ。



「アレン、HAPPY BIRTHDAY!」











おまけ


「…おっ、アレンおかえり〜美々おつかれさ〜」
「モヤシ!白髪なのは仕方ない、俺の黒髪が羨ましいだろはっはっは!」
「むむ〜アレンくん帰ってきたのぉ〜見えなーいどこよラビ!…嘘ね、嘘ついたのね!」
「いでででで!ホントさリナリーの目の前にいるから!!」
「リナリィイィィー!!」
「黙れ史上最悪変態最悪糞眼鏡兄貴め…六幻で八つ裂きにしてやる…!」


「あ、の……これは一体…」

「あちゃーアレンが帰ってくるまで待ってろって言っといたのに…みんな酒に酔ってるみたい…あは」


「「……」」


HAPPY BIRTHDAY allen
& MERRY X'mas 2010
12/25 美玲