地球は明日には終わるらしい。いつになく深刻な顔でコムイさんは私たちにそう言った。いつもの冗談だろうと笑い飛ばしていたけど、唇を強く噛み締め何も言わないコムイさんを見て嗚呼本当なんだと思わされた。……どうやら、地球に月並みの大きさの隕石が接近しているらしい。リーバー班長が難しい計算をパソコンに打ってシュミレーションしたら、明日には地球はバーン、らしい…。誤差は0.07%、確実に当たる。その数字に賭ける程、私たちは馬鹿ではない。皮肉な事に、任務は無くなった。



笑うしかできなかった。一体何の為に私たちは黒の教団として、エクソシストとして戦ってきたんだろう。まだノアたちとの戦いに決着すらついてないのに。泣き崩れるファインダー、科学班、リナリー…。そんな人たちを見てそう思わずには居られなかった。



* * *



「あれ、何処に行くの?」


「……チッ、任務だ」


「あはは、さすがだね」



暗い部屋の隅で、私はただ座ってユウの支度をただ見ていた。話しているのはくだらない事ばかり。それだけでも、世界が明日には無くなるという事実を忘れる事ができた。



不意にしかめっ面のユウは珍しく謝罪の言葉を口にした。…………分かってた、神田ユウは最期までエクソシストとして戦う事は。彼女の私の言うことも聞かずに意味のない任務に赴く事も。



「…伯爵は地球が最後だろうと容赦しねぇからな」


「…………死なないでよ?」


どうせ、明日になればみんな隕石と一緒に星屑になってしまう、だからそんな言葉は無意味。…言葉には出さなかったけど。真夜中な筈なのに、空が少しずつコバルトブルーから燃え上がるようなリコリスの色へと明るくなってきたようにみえた。―――タイムリミットが近づいてきている。私の震える右手はユウの頬を撫でる。困惑の表情が目の前にあった。


「ユウ………」


「…、悪かったな、最後まで彼氏らしい事をしてやれなかった」


「ふふ、今さらじゃない」




「…………愛してる、」


「!わ、私も、愛してるっ!」




最後の最後に私に向けた言葉。酷い、もっと、もっともっともっとユウと、そして皆とこの星で生きたくなっちゃうじゃない。離れたくないとぎゅっと抱き締め合う身体。その温もりも忘れないようにさらに腕に力を入れた。さらに一瞬の温かさがれた時に思わず涙が零れた。

「――――また、な」
「…うん、絶対だからね」



ほんの少しだけ笑いながらユウは団服のコートを着て部屋を出ていった。………ちょっと、私は最期まで一緒にいたい、そう言うために部屋に来たはずだったじゃない。でも不思議と悲しみはなかった。きっと、貴方とまた逢えるから、私は恐怖に打ち勝つことが出来る。綺麗な赤い空を見上げて、私はユウへの我が侭は次の再会までとっておこうと思った。それまでは――――




な ら
(またどこかで出逢えたらどうかやさしく微笑んで?)




涙墜さまに提出。
参加させていただきありがとうございました!