目の前が真っ赤になった。否、正確には真っ赤な液体があたり一面に広がっているからだ。独特な匂いはまるで麻薬のように、私の脳内にスッと入ってくる。
「派手にやらかしましたね」
振り向くと軽く片手を上げたアレンが居た。赤の中に異端な白の姿、変わらないすました微笑み。その微笑みを嘲笑う。
「私を、殺すの?」
「………」
裏切ったのに、イノセンスはまだ私の手の内にある。何故だろう…尖落ちして当然なはずなのに。血化粧で真紅のイノセンスを見つめているとスッと左手を私に向けるアレン。嗚呼私は大好きな人に殺されるんだ…。すぐにくる衝撃を覚悟して、瞳を閉じた。
………痛みが、こない?そっと瞬くように目を開けると悲しそうに微笑んだアレンが頬をするりと撫でていた。
「君を失うわけにはいかない」
「あ、レン…?」
「ここにティムはいない…コムイさんには殺したと報告するつもりです」
なんて甘い嘘なんだろう。血まみれなのにも関わらず思わず彼の胸へと飛び込んだ。きっと、こうできるのも最後だから。
一瞬の熱に酔いそうになりながらも、私は後ろを向いた。目の前には可愛らしい扉。これをくぐればもう、戻れないのに。――――さようなら、アレン。こんにちわ、エクソシスト。
(次に会うとき、私たちは敵よ?)
遺愛さまに提出。
企画に参加させていただきありがとうございます!