「恭弥」


「………なんなんだい、群れるつもりなら君だって」


「ちょ、話聞いて!群れてない群れないからって!」



不満タラタラな顔付きで愛武器をしまう風紀委員長。仮にも女の子にトンファーを構えるなんて…。そう思った瞬間に切れ長の瞳が更に鋭くなった気がした。…気を付けなきゃ。



「まあ、こんな夜に学校呼び出したのは悪いと思ってるからさ、ね?」


「本当だよ、時間外に学校に侵入するなんて真似、僕にさせる君はある意味凄いよ」


「(…)あっそ、」


チラリと時計を見ると後数分だった。冬の風は学校の屋上にいる私たちに吹きつける。マフラーに耳当て、コートと防寒対策はしてきたはずなのに、寒い。隣の恭弥もハァ、と息で指先を温めている。……あ、そういえば恭弥の私服、初めて見たかも。あーちくしょうカッコいいじゃないか。ふと目が合う。ドキリ、と音がした。


「何ジロジロ見てるんだい美々」


「…私服、初めて見た」


「…………ふーん、…っ!」



会話が止まる。手すりにもたれかかりながら、私はしてやったりと笑った。珍しく恭弥の瞳が見開かれる。
今年の並盛は、クリスマスのイルミネーションに力を入れたと聞いた。それなら学校からよく見える、そうふんで私は嫌がる恭弥を無理矢理夜の並中屋上に誘ったのだ。




赤、青、金。キラキラと輝く光。

点滅を繰り返す並盛町。




まるでお伽話のような世界、ふとこんな当たり前な日常がもう少しで終わりになるのじゃないか。そんな気がした。


急に不安になる。


沢田綱吉、ってあたりと急に絡み始めてから、何かが変わってきている。そう、私が知らないうちに何かが。


そんな私を他所に町に目を向けていた彼はクルリと振り向いた。あ…、笑ってる。



「君にしては、いい事を考えたじゃないか」


「…………もっと褒めてよね」



「並盛が、だよ」



このやろー、と思わずヘラリと笑ってしまった。さすが、並盛を愛する男だな。急に視界が変わる。真っ黒。フワリと清潔な香りと血の匂い。……また戦闘か、はあ。…………ん、って、この状況って…!



「……君ぐらいだよ、僕の傍に居ていいのは」



珍しく頬を少し染める恭弥。



「…っ、私…傍に居てもいいの?」



「嫌なのかい?まあ、そんな事言ったって僕は美々を離すつもりはないけどね」



不安なんて吹っ飛んだ。不安になる必要がないから。





だって、君が傍に。




(好き、ってこと?)

(!…………フン、咬み殺す)

(え、この流れ可笑しいでしょ!?)