「やあ美々、こんな所で会うなんて奇遇だね」

運命を感じない?ニコリと私に笑いかけながらくさい言葉を発する綱吉先輩。私は引きつりそうな頬に力をこめて、なんとか笑顔にすることができた。



「思いません、先輩」





ピシリと固まった笑顔を尻目に私は慌てて逃走した。この後の事なんてすぐに想像できる。さあ、なんでしょうか?答えは簡単、追いかけてくるでーす。泣


一瞬だけ後ろを振り向くと黒い微笑みを浮かべながら息も乱さずに追いかけてくる沢田綱吉(先輩)。並高の美男子と影では女子が騒いでいるが、私にとってはそんな風に思った事はなかった。ただのいい迷惑だ。むしろ山本君の方がイケメンだ、天使だ。つーか、中学までダメツナ呼ばわりされてたのになんでこんな自信満々なんだよ、おい。何があったんだ、夏まではダメダメだった、おい夏休みに何があったんだ忠犬獄寺隼人!



心の中で全てに悪態をつく。学校指定の赤いリボンを風にゆらめかせ、スカートなのに廊下を全力疾走、スリップしながら角を曲がりその勢いのまま階段を飛び降りるという荒業を繰り出した。そこから人混みに紛れて誰もいない廊下に辿りついた。息を整えながらももう追ってこない、そう思い思わずニヤリと笑う。


ガシッ。




ガシッ…?



「急に走り出してどうしたんだい?」


「ヒイッ!な、なんでもう後ろにっ!?」


汗すら流していない奴がそこにいた。…もう名前すら出したくない。ニッコリ、笑いかけてきたサイヤ人(頭が)。


「美々、君先輩への態度なってないよね」

「先輩が先輩らしい行動をしてるならこんな事しませんよ」


「ぶー」

「……」


膨れっ面でぶー、なんて可愛いじゃないか。少しキュンとしたけど慌ててその考えを水に流す。


「とにかく、私は失礼します」


「えーもう少し一緒に居ようよー」


私は顔を背かせながら口をモゴモゴさせた。ここまできたら、正直になんかなれない。そんな事を考えてしまう。世間ではこんな性格をツンデレとか言うが、そんな大それたものじゃない。ただの………



「恥ずかしがり、だろ?」


「っ!心ん中読んだな!?」


…………当分素直になるのは無理なようです。