彼女は俺に似ていた。髪の色、瞳の色、純血。でも唯一違ったのは家族が純血主義じゃない事。たった1つの違いだったが、俺にとっては羨ましい限りだった。


 「いいですか、シリウス」


 母親はまず始めにこう言う。するとお小言の始まりだ。マグルを穢れた血、ブラック家を高貴な一族、お前は次期当主に相応しくあれ、それくらいしかあの女の頭の中にはないようだ。俺を自分の子供とは見ず、ブラック家の長男、当主にすべきと物のように扱った。…それを誇りにしているようだ。


 俺はそんな家風が嫌だった。普通の家庭に、マグルだっていい。


 普通に愛されたかった。




 グリフィンドールに組分けされたその時はすごく嬉しかった。やっと、解放される、と(それと同時に寂しさも感じた)。


 しかしあの家は俺を放そうとはしない。吠えメールを大量に送ったり、夏の休暇に帰ると部屋に閉じ込めたり……正直うんざりだった。そのせい、とは言えないかもだがホグワーツでは乱れた生活をしていた。愛されなかった分、愛し方が分からない。身体だけの関係ばかり。ジェームズ達はそんな俺を仕方ないと見ていたが、それすら俺をこのループから脱け出せない理由の1つにもなった。


 そんな時に現れたのがあいつ――美々だった。パーティーで見かけた事がある程度、純血主義の一家ではないせいかブラック家との交流は薄かった。


 「溜め込みすぎよ、シリウス君」


 優しい声が風のように心に響いた。その時に、俺は何かを感じた。―これが恋だったのかもしれない。後で気が付いた事だったが。


 それから何かあるたびに俺は彼女の元へ行った。1つ年上の彼女は同じ寮の先輩、だが先輩とは思えぬ可愛い容姿…からかうといつも膨れていた。


 「シリウス君!君が大人っぽすぎるのよ!?」


 そう言われる事がくすぐったくってとても嬉しかった。



 告白を決意したのは4年の時、2年間もこの気持ちには気付かなかった。意識しすぎてその年はあまり彼女の元に行かなかった。冬の休暇が始まる前に慌てて彼女の姿を探した。城には居ない……。溜め息をつきながら湖の方を見る。


 ――見つけた。


 次の瞬間目の前が真っ暗になった。微笑む彼女の隣には同じように優しく微笑む男がいた。2人の手は繋がれており、身体を寄せ合い冬の寒さに耐えていた。寒いはずなのに、暖かさを感じているようだ。見計らったように、時計が4時を告げる。


 なんで、もっと早くに気付かなかったんだ?猛スピードで寮への道を走る、走る、走る。柄にもなく頬を熱い涙がつたう。


 「好き、だったのにな…」



 ふわりと雪が外を舞う。幾つかが顔に当たるがすぐ溶ける。立ち止まる。…気持ちと、サヨナラするために。…先輩、今年は厳しいな。せめて来年、来年の今ごろにまた一緒に笑っていれたらいい。腫れた瞳を魔法で治して俺はそのまま寮に帰る事にした。





 初めての恋が終わる時



元拍手です。
初音ミクの曲から題名をいただきました。
…少し内容もリンクしてます。
元サイトの7千ヒットのリメイク版です。