「ねぇ、死ぬんだったら私が殺してあげようか」



図書館で暇つぶしに本
を読んでいた僕は唐突
に聞こえてきた声に思
わず顔を上げた。美々
はニコリと笑いながら
僕の前の席に腰かける。
頬杖をつきジッとこち
らを見つめる。



「…なんでそんな事を言うんだい?まだ僕が自殺願望者だって決まったわけじゃないのに」


「……あ、この傷は自らつけたんじゃないんだ」


手や腕につく生々しい
傷痕に人差し指の爪を
滑らせながら美々は
呟く。半分正解で半分
ハズレである。たしか
に自分でつけた傷、だ
からって好きでつけた
わけじゃない。僕の身
体はボロボロだ。マダ
ムに薬を貰ってもあの
鋭い牙や爪でできた傷
はそう簡単には治って
はくれなかった。


「当たり前だよ、美々ったら」


「チェッ、つまんなーい」

ハハハと笑ってみせる、
不服そうな顔で美々は
ぷくーっと膨れていた。


「じゃあ約束しようよ」


「約束?」



「お互いどちらかが死にたくなったら、殺してあげるんだよ」



僕は弱い、彼女の傷に
気付きながら気付いて
ないフリをする。彼女
が僕を求めているよう
に、僕も彼女を求めて
いる。だからって人狼
に恋なんて感情はいけ
ない。


これは愛のカタチ。僕なりの愛し方。



「リーマスがそう言うならいいよ」


ほら、彼女だって全て
を知ってるのに知らな
いフリをして僕の嘘に
乗っかるんだ、君だっ
て罪をかぶらなくちゃ
ね。そうだろ?君だけ
楽をするなんて許さな
いんだからさ。