美々は突然の身体の激痛に顔を歪ませた。ぼやける視界に金色が一面を覆った。

「何故、逃げようとした」
「貴方から離れるためよ」

何度も口にした言葉をまた吐き出した。針穴のような小さな傷からとは思えない痛み、スカーレットニードルを彼は一般人の美々に撃ち込んだのだ。よく死なないよなあ、と他人事のように考えていると身体を持ち上げられた。慌てて目茶苦茶に暴れるも、ミロには効果はないようだった。いとも簡単にまた天蠍宮に戻り、プライベートルームのうちの1つに連れてかれた。

「分かってくれ、お前を逃がすつもりはない」
「なんでよ!?」
「何度も言ってるだろう」
「また偽りの愛を吐き出すつもりでしょ!?」

瞳は真っ直ぐと美々を見つめる。真剣なミロの態度に居心地の悪さを感じ視線を逸らした。駄目だ、このままだとミロに感情を抱いてしまう。私は拒絶だけしていればいいんだ。

「…信じられないならそれでいい。だがこれだけは忘れるな」
「……っ」


「黄金の蠍からは、逃れられない」


これも、愛情と呼べるのだろうか。甘すぎて腐ったような柔な彼の歪んだ愛に、私は溺れないようにすることだけに必死だった。