「えええええ!わ、私が陛下とダンス!?」 「おう、よろしくなー」 「簡単に言わないで下さい!一介の騎士である私がグランコクマの王である陛下と…っ、ダンスなんて…!」 「大丈夫だ、美々なら出来ると信じてるぞ!」
楽しそうに自室でペットのブウサギと戯れるピオニー陛下に、自分の身を盾にしてでも主を守らねばならない美々はこのお気楽な主に殺意を覚えた。
「第一、これの言い出しっぺはジェイドなんだぞ?」 「なんでですか大佐あああああっ!?」 「まぁ、預言を撤廃することに反発する奴らからの暗殺計画もあるらしいし…今回のパーティーでは護衛の為でもあるんだぞ」 「うっ…」
そんなことを言われたら断れないのは当たり前である。だが相手がピオニーなのが問題なのだ。30代とはいえ、イケメンでフェミニストなのだ。いちいちフェロモンを撒き散らし、けだるげな様すら彼を縁取る素材である。あの瞳を、近距離で見つめるなんて、できっこない!
「俺、お前と踊るの楽しみなんだからな!練習怠るなよ」
ヒラリと手を振り玉座の後ろにある隠し通路から陛下は逃走した。
「…言い逃げ?」
私の心臓を壊すつもりなのかしら…っ!
お戯れはおやめください!
勿論、私の叫びは陛下に届くわけもなく広い宮殿に響いただけだった。
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