「…あれ?デスマスク、美々を見てないかい?」
「んあ?あーわりぃ、見てねぇな」
「そうか…」

アフロディーテはおかしいなと首を傾げた。いつもなら双魚宮か教皇宮にいるはずの女官の美々が見つからないのである。…せっかく、前に約束していた薔薇の香水ができたから渡そうと思ってたのだがね…。溜め息をつくと悪友であるデスマスクが面白そうに笑みを浮かべながら肩に腕を回してきた。

「どうしたんだよディーテ、まさかあの童顔のことが―」
「それ以上言ったらロイヤルデモンローズだよデス」
「…ったく、そんなにあいつのこと好きなのか?」
「……あの子は私を私としてみてくれているからね…」

実際周りの女は私が黄金聖闘士だから、顔が綺麗だからと近寄り媚びる。だが美々はそうではなかった。普通の人間として接してくれた、笑顔をみせてくれた。それだけで私は十分、彼女に魅せられてしまった。

「………まぁ、今ごろあいつは…」
「え?何か知ってるのかい」
「はァ?お前、気付いてないのかよ…実は」
「お前たち!!!執務をサボって何をしておるのじゃ!!!!!」

小宇宙の高まりを感じ無意識に飛びずさると今まで立っていたところに穴が空いていた。そこには教皇シオンがメラメラと攻撃的小宇宙を漂わせ髪もそれに合わせたなびかせて立っていた。

「お前たちがこんなところでサボっているからわしが五老峰に行けんじゃろう!」
「げっ!自分だってサボりたいだけじゃねぇか!」
「煩い小僧ども!サガも死にかけた顔で執務室に居るんじゃぞ!若造ならもっと働きたまえ!!」

シャツの襟をつかまれデスマスクと共にずるずると教皇宮の大理石の上を引きずられ、執務室へと強制送還されてしまった。中に放り込まれると真っ白な顔をしたサガと何故かニコニコと仁王立ちをしているムウとアイオロスがいた。……気まずい。2人は慌てて自分の机に飛び付き書類を片付け始めた。



***

結局アフロディーテたちが解放されたのは8時過ぎだった。文字ばっかり見ていたので若干目と頭が痛い…。自分の宮が教皇宮に1番近くてラッキーだ。そう思いながら中に入る。…幾つかの小宇宙を感じ取った。黄金たちが何人かいるようだ。…あいつらは人の居住スペースに何勝手に入っているんだ…!?白薔薇でめった刺しにしてやる…!薔薇を片手にリビングに入った。

―――パン!


「「「HAPPY BIRTHDAY!アフロディーテ!!」」」

「………え?」


ニコニコとした美々と黄金聖闘士、かつては敵だった青銅たちも勢揃いでクラッカーを片手にしていた。…まさか。美々が見つからなかったのは、私の誕生日会の準備をしていたから…?

「ディーテ、生まれてくれてありがとう…!」

大きな箱を持って輝くような笑みで美々は近づいてきた。ケーキに酒、プレゼントや食べ物…こんなにたくさん私の為に、彼らは私の為に用意してくれたのか…。アフロディーテは笑みを浮かべざるを得なかった。