真っ白なシーツに黒い髪と赤い髪が乱れていた。美々の手首は掴まれていたせいか髪と同じように赤くなっていて痛々しかった。そこに唇を寄せる冥界の王ハーデス。なんで、妻がいるはずの彼が、しかも敵であるアテナの女官である私が、こんな所にいるのだろうか。しかも、ハーデスは聖闘士であるアンドロメダ座の瞬の身体を寄代にしたのだ。あの優しい眼差しの少年が今では歪んだ笑みしか浮かべていない…。悲しむ美々アを気にせず唇を肌に添わせ動かし、時折思い出したかのようにちゅ、と吸い付く行為にぞわわと背中がしなった。ふと行為が止まり見ないように閉ざしていた瞳を開けると漆黒とぶつかった。

「何故、というような顔をしているな」
「あ、たりまえです……アテナに仕える私をなぜ…?!」
「愚問だ。余が気に入ったからだ」

そのまま唇を添わせるだけの行為を再開させるハーデスに溜め息を覚えた。アテナへの懺悔を呟くと不愉快だとばかりに美々へと爪を立てた。痛みに口を歪ませ言葉が止まるとまた満足そうに唇での愛撫を再開させた。

「私を、殺して」
「別に余はお前を殺してもいい。寧ろ我が冥界にお前を永遠に閉じ込められるがな」
「…っ!」

それは困る、それこそ奴の思う壷だ。逃げられないこの状況に美々は受け入れるか諦めるしか選択肢はなかった。早く誰か、助けにきて…。僅かな小宇宙に祈りをこめて来るであろう星矢たちの道筋となるように流した。勿論、ハーデスはそれに気付いていたが、どこまでも抗おうとする美々が面白く、そのまま放っておくことにした。神に、そんなことで抗えるものか。渡さない、永遠に。