「お帰りレグルスっ!」 「わっ美々!?ただいまー!」
任務から獅子宮に帰ってきたレグルスに飛び付いたのは女官を勤めている美々だった。幼なじみだった彼女はシジフォスに連れられてレグルスと共に聖域に来て見習い女官を始めた。それから飲み込みの早い美々はすぐに出世し黄金聖闘士の守護する十二宮にお仕えできる地位まで登りつめた。同時期にレグルスも獅子座を継承したので教皇からのサプライズとして美々はレグルスの獅子宮に配属された。
「「(それにしても…)」」
レグルスと美々は小さく息をはいた。
「(可愛い…)」 「(恰好いい…)」
相思相愛なのに互いの想いに気付かず胸を何年も焦がしていたのだ。
不必要な暗澹の消し方
a 美々は胸のもやもやに苦しくなってきた。もう少しだけ、私に勇気があったら…。でも私は一介の女官、彼は聖闘士の中でも地位の高い黄金聖闘士。今レグルスの隣にいれるのは奇跡、そう言い聞かせて一線を越えることはしなかった。 それでも黄金聖闘士は美形が多く、女官や村娘たちからは注目の的であった。尊敬されている彼を誇りに思い、また自分以外の女に好かれている彼にもやもやとした気持ちを抱えた。
b どうして、俺ってこんなに不器用だっけ。白銀聖闘士との組み手の中レグルスは悶々と考えていた。手を伸ばせば届く距離にいるのに、拒絶が怖くて今の心地好い関係から進められなかった。このままでは他の男に取られたくなんかない。
c もう少し、もう少しだけ勇気があったら…。もしかしたら想いが通じ合っているのかもしれない。何度も考えた。だが今はこの世界を守るための聖戦の最中。守りたいが、弱みにもなる。支えたいが、重荷になる。相手の迷惑にはなりたくなかった。それでも――
「「すき」」
この気持ちは、変わらない。
「レグルス」 「ん?どうしたの美々」 「聖戦、早く終わるといいね」 「ああ…俺、頑張るよ!」
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