「カノン!」
「遅いぞ美々」

私は双児宮で働いている女官だ。表向きにはサガ様の世話を、でも本当はサガ様の双子の弟であるカノンの世話と監視をしている。初めは意見の食い違いも多く衝突もしたが、今では仲がいいと言える。宮で表立って過ごせないカノンに私は食事を運んだり小宇宙の使い方を教えた。戦いの事になるとキラキラと夕日に海色の瞳を輝かせ拳を回していた。何年も過ごすうちにお互いに20を越えた。とうに相手を異性として意識していて、でも一歩を踏み出せなかった。

ところが急にカノンの様子がおかしくなった。ふさぎ込むようになり、苛々したり、時には暴力的になった。だがその後は決まって落ち込み私を縋るように抱きしめるのだ。背中に腕を回すも、これでは解決に繋がらない、と溜め息を零してしまった。私はカノンの怒った顔でも悲しそうな顔でもなく、笑顔を見たいのだ。どうしたらいいんだろうか。それをサガ様に相談すると思い当たる節があるのか、顔を強張らせてもうカノンの世話をしなくていいと言ってきた。

「そんな…!考え直していただけませんか!?」
「駄目だ。カノンは私が何とかしよう」

いつもはお優しいサガ様だが、弟のカノンのことになると少し厳しくなる。確かに暴力的だとあまり評判はよろしくない。滅多に人前に出ないために噂は増長してしまう。だからサガ様もお困りになられているのだろう。でも私にとってはカノンは大切な存在だ。急いでいつもの待ち合わせの場所に向かった。そこにはもうカノンが居て、寂しそうに海を見つめていた。赤い海、悲しくなってきた。

「カノン…」
「俺は、きっと遠くにいく」
「え!?どういうこと…?」
「もう会えないかもしれない」

突然の言葉に口が塞がらなかった。会えない…、そんなの嫌だ。

「い、やだよ…なんで!?」
「…こういう運命だったんだ。俺はいつも兄の影だった、ころからもずっと」
「抗えばいいじゃない!」
「抗ったつけが回ってきたのだ」

自嘲を浮かべていたカノンはハッとした。美々の頬に伝う涙が見えたからだ。夕暮れに染まりそれは赤く見えた。

「だって…もう、会えない気が…っ!?」

美々は言葉を失った。カノンが自分の手を引っ張って自分の方に引き寄せそのまま唇を奪ったからだ。ほんの一瞬のキスが長く感じられた。離れたカノンの唇がゆっくりと動いた。

「…かもしれないな」

でも俺は約束する、また美々に会いに行くとな。そう言ってカノンは去ってしまった。崩れ落ちる身体、溢れる涙が伝う顔を手で覆う。この場所を動きたくなかった。カノンとの思い出がつまっているから。ここから立ち去ったらそれが無くなってしまうように思えた。

「本当に、会えるんだよね…カノン」

涙を拭い、夕日が沈む海を見つめた。

「約束…だからね」








めめこ様からのフリリクでした^^
赤い涙、初めて聞きました!
(同じ歌手の、とある化学〜の主題歌は知っていましたが)
もしや薄桜鬼のMADでしょうか?
微笑み動画で見たらきゅんきゅんしました(^q^)←
おおお褒めいただきありがとうございます…っ!
LC連載はまだ中盤くらいですがお楽しみに!