温かい、匂いがした。身体がふわりと浮く感覚、水の中に居るような動かしづらさ。寒い、震えていると頭に手がのっかりいい子いい子、と撫でられた。瞼を開ける、オッドアイが私を見つめる。



「む、くろ………?」



「魘されていましたよ、さあご飯はどうですか?」


どんな夢を見ていたのかさえも忘れていた。けど魘されてたと彼が言うならそうなんだろう。身体を起こしてリビングに向かう。ペタペタとスリッパの音が廊下に響く。前8時。任務はまだだから余裕だな、そう思いつつ骸が用意してくれたトーストとハムエッグをいただく。珈琲に角砂糖をぶちこんでたら顔を引きつらせてた。



「糖尿病への第一歩ですよ」



「その分仕事してますから」



「まるで僕が仕事をしてないみたいですね」


「似たようなもんじゃん」


ニコリと笑いながらブラックをすする骸、1枚の絵のような光景にドキリと胸が高鳴る。今までこんな日常が訪れるなんて思わなかった。この一瞬一瞬が、大切で不安と希望に溢れている。



「ねぇ、骸……」



「なんですか?」






幸せですか?






すぐに嬉しそうに目を細めてはい、と答えてくれる貴方に恋をした私も幸せです。