ずるずる。


ずるずる。



「……っ!あぁあああ!!アフロディーテ!!」
「…なんだい急に大きな声を出さないでくれ」
「じゃあ大きな声を出させてるのは誰よ?!」

美々は腰に腕を回し離れようとしないアフロディーテに拳を落とした。がつん、といい音がなり呻き声も聞こえたが離れようとはせず逆に力が篭り更に動きにくくなった。

「(……一体どうしろと…)」

こんなに甘えてくることは珍しくもしもこれが今日でなかったらきゅんきゅんしているところだったが、今日は何かと仕事が多く、書類を纏めたり双魚宮の掃除をしたりとゆっくりする暇はなかった。今だって本当ならこの書類(アフロディーテの、そして期限は1週間前)をサガに届けたいがこの魚のお陰で階段を上る自信はない。勿論、聖闘士である自分には体力も力もある。だがきっとこの麗人はそれを阻止するべく小宇宙を駆使するだろう。仕方なく小宇宙通信でサガを呼ぶ。

―あ、サガーディーテの書類出来たよ―
―……今更か…―
―だってやらないディーテが悪いんだもん―
―それでは今すぐ持ってkー

ブチッと音がして通信は途絶えた。嫌な予感がして見下ろすとにんまりとしたアフロディーテがいた。

「ちょっと!仕事の話なのに何やってんのよ!」
「私に構え!」
「は!?」
「仕事だからとはいえ他の男と会話するな!特に小宇宙の通信は止めろ!」

髪を振り乱し駄々っ子のように喚くアフロディーテに溜め息をつきたくなった。ヤダヤダと豊かな黄金の髪を足に擦り付けてくる。本当にどうしたの?

「ね、ねぇどうしたの?」
「……今日が何の日だか、覚えてないのか?」
「今日?……あ」

1年、記念日だ…。もしかして、それだから構ってとか甘えてたのかな。私が忘れてると思って拗ねてたんだ。あの、アフロディーテが…ふふっ。

「……なに笑ってるんだい」
「ううん。今日のご飯、ディーテの好きなものにするね」

そう言ってキスをすれば満足そうな笑みを浮かべてアフロディーテは強く抱きしめてくれた。






あいしてる。耳元で蕩けるような声色で囁かれてきゅん、とときめいた。