「お帰りなさいませアルバフィカ様」 「!……ただいま、美々」 「任務お疲れ様です」 「ありがとう」
双魚宮で女官を勤めている美々は宮の主であるアルバフィカに笑みを浮かべながら礼をした。久しぶりに帰ってきたアルバフィカ様。今日は腕に縒りをかけて夕ごはんの支度をしなくっちゃ…!2人は並んで宮の中に入ったが、その間は大きく空いていた。それに気付いた美々はアルバフィカにバレないように溜め息をついた。…まだご自分の血を、疎んでらっしゃる。私だってこの双魚宮でお仕えする身、多少なりとも耐毒はできている。だからもう少し、もう少しだけお傍に近付きたかった。お優しいアルバフィカ様のお力になりたかったのだ。
***
美々は気付かなかったがアルバフィカもこの2人の距離を縮めたいが自分の体質を考えてしまい身体が動かなかった。……本当なら、その小さな肩を支えてやりたいのだが。この血と先生から良くも悪くも受け継いだ孤独の時間が長いもので接し方が分からなかった。ましてや気になる女官に、ならなおさらである。ふと任務前に珍しく話し掛けてきた蟹の言葉を思い出した。
「美々は可愛いから目を離すと他の奴に喰われるぞ…俺とかにグハッ!」
黒薔薇を乱舞しておいた。全く…!だがたしかに蟹の言うことも一理ある。このままでは可愛い美々をろくでもない黄金たちに取られてしまうそれだけはなんとしてでも防がねば…!聖衣を脱ぎラフな格好に着替えて、椅子に腰掛ける。テーブルに用意されていたフォークとナイフを握りしめながら決意するアルバフィカ。それを端から見て首を傾げる美々。
「(なんでフォークとナイフをもう握ってらっしゃるのかしら…?きっとお腹を空かせてらっしゃるから早く用意しろってことなのね!)」 「(とりあえず蠍と蟹、乙女には気をつけねば…)」
対策を練っている間に用意されていた食事を口に運ぶ。
「…美味、しい」 「本当ですか!よかったぁ…」
ふにゃりと安心したように笑う美々にきゅんと胸が鳴った。
…なんだ、きゅんって。そのまま宮から帰ろうとする美々の背中を物足りなさそうに見つめるアルバフィカはふといいことを思いつき美々を呼び止めた。余り見ないラフな姿のアルバフィカにドキドキしながら振り返る。
「どうかしましたか?」 「………っ、今日は一緒に食べないかい?」 「!!わ、私でよろしかったらぜひ…!」
プリズム
貴方と見る景色は、いつも輝いて見えるのです。
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