「見てくださいアルバフィカ様!僕が育てた薔薇が漸く咲いたんです!」
毒薔薇を手入れし終え自宮に戻ると、帰りを待ち侘びていた美々が嬉しそうにキラキラとした笑みを浮かべて鉢に入ったミニバラをアルバフィカに見せた。そこには小振りながらも美しいピンクに色づいた薔薇があった。朝露を少し含み、太陽で光るそれはアルバフィカの薔薇とは違い毒はないが美しく、それでも似ていると思った。(――何故だ?)
「…綺麗だな。小さいとはいえ薔薇は育てるのは苦労しただろう」 「あっ、ありがとうございます!本当に大変でした…でもとても楽しかったです!」
にっこりと笑いながら美々はアルバフィカに褒められたことに照れて頬を軍手をはめたままポリポリとかいた。はにかんだ美々の左頬には軍手に付いていたであろう土がこびりついていた。思わずくすりと笑うと何故アルバフィカが笑ったのか分からない美々はきょとんと首を傾げた。不思議そうな美々へそっと手を伸ばし包むように頬を固定してから親指の腹で汚れを落としてやる。
「土が、付いているよ」 「!あ、ああぁあアアルバフィカ様そろそろお茶にしましょう僕用意してきますね!」
面白いくらい真っ赤になった美々はお礼を言うのも忘れて双魚宮へと駆け込んでいってしまった。よっぽど、恥ずかしかったのだろう。嗚呼、美々は見ていて本当に飽きないな。唯一自分が触れたいと思い、他の聖闘士たちに取られたくないと思った女だった。
「――今のは、脈ありととっていいのかな?」
笑みを隠しきれないまま双魚宮に入ると慌ただしくお茶の準備をしている美々とばっちり目が合った。面白いくらい慌て出す美々、だが慌てすぎて足が縺れアルバフィカの方へよろけた。小さな身体をアルバフィカは自身で受け止めた。
「…大丈夫か?」 「あっ!ああありがとうございますアルバフィカ様!全くここでコケるなんて僕ったら…」
恥ずかしそうに下を向いたまま離れようとする美々の背中に手を回す。ぴくんと固まる美々。
「…もう少しだけ、こうしてていいだろうか?」 「!」
さっきよりも真っ赤な顔をしながらも大きく頷く彼女がまた更に可愛らしく見えてアルバフィカは人との触れ合いも悪くないと幸せを噛み締めた。…ルゴニス先生、先生と毒薔薇以外にも大切なものを見つけました。
花冠に集う幸せ
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