「なあ、お前俺に付き合え」 「………え、」
蠍に目を付けられました。
突然の蠍座のカルディア様の付き合え発言から数日。私は急に双魚宮から天蠍宮に勤め先が変わった。…絶対に奴の圧力だ!無口だが優しいアルバフィカ様は下の宮に降りる私を心配そうに見送ってくれた。(なんとお優しい方なんだ…!)宝瓶宮、磨羯宮、人馬宮と降り例の天蠍宮にやって来た。入口には例の黄金聖闘士が柱に寄り掛かって待っていた。
「やっと来たな美々」 「…なんで異動しなきゃいけないんですか」 「彼女と一緒に居たい、からじゃ駄目なのかよ」
全く白々しい!それより私はまだOKすらしてないんですが…。そんな私にお構いなしにカルディア様は手を引っぱり私を宮の中に入れた。…愛と正義を守るアテナの聖闘士の宮なのになぜか魔窟に見えた。そのまま仕事に向かうのかとおもいきや彼のプライベートの部屋に連れていかれた。
「ちょっとカルディア様!仕事しろや仕事!」 「いいじゃないか…聖闘士は疲れるんだよ」
無理やりソファーに座らされる。すぐに太股に重みがかかる。下を見ると青いもふもふ。………。
「…カルディア様、一体何をしてるんですか」 「んー、膝枕」 「何勝手に…」 「いいじゃないか別に。ふあ…ねむ」
聖衣をがちゃりといわせながら寝返るカルディア様。その両腕はしっかり腰に巻き付いている。…金色を纏った我が儘猫みたい。もう寝息をたてるカルディア様の髪をそっと梳いてやる。もふもふもふもふ…!思わず笑みが零れる。…黙って拳を振るっていればお強くて格好良い尊敬する聖闘士様なのに。どうしてドSなのだろうか。…でも、この人に告白、されたんだ……。そうっと撫でていた指先に指が絡まる。……っ!?
「…満更でもねぇだろ?」 「起きてたんですか?!」
慌てて下を見ると勝ち誇った笑みを浮かべるカルディア様と目が合った。顔が赤らむ。指、恋人繋ぎ…!
「俺、本当に美々のこと好きなんだぜ?」 「…!で、でも…」
膝の上で楽しそうに笑うカルディア様、もう…ドキドキさせられる…っ。手が伸びてきて頬に触れてきた。きゅっと目をつむるが、優しく壊れ物を扱うかのように撫でている。目を開けると穏やかな表情のカルディア様。 「カルディア、様…」 「その様呼ばわり、止めろよ」 重みが膝から肩に移動する。ソファーに2人、お互いを支えるようにもたれ掛かる。これって、端から見れば恋人みたい…?美々の心臓は爆発しそうだった。…やっぱり、働いていける自信がありませんアルバフィカ様。そんなことを思いながらも昼の穏やかさと温かな体温につられゆっくり瞼を落とした。それをみてカルディアも笑みを深くしてその閉ざされた瞼に唇を落としてから自身も眠りについた。
2人が寝た後、美々が心配になり天蠍宮を訪れたアルバフィカはその光景に珍しく笑みを浮かべた。
例えば、こんな恋のはなし
こんな始まり方でも、いいですか?
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