カーテンの隙間から差す光に目が覚めた。くあ、とあくびをした。いつもと違う香りと温もりに隣を見ると昨日寝た相手がぐっすりと熟睡していた。……嗚呼、私なんてことしたんだろ。浮気…だよねコレ。でもね。頭に愛しいアフロディーテを思い浮かべた。貴方が悪いんだよ?

頑張って貴方の隣を堂々と胸を張って歩きたかったんだ。でもね。私、もう疲れちゃってたんだ。弱い自分が大嫌いで、醜くて、アフロディーテとはまるで正反対。

「君は君のままでいいんだよ」

優しい言葉に私を想ってくれている事実への嬉しさと愚かな自分の弱さを感じた。抱きしめてくれた身体がまるで汚れて汚れているように思えた。止めて、こんな身体に触れないで。でも力強く抱きしめてしまうんだ。涙が零れそうになりながら寝返りを打った。隣の男と目が合う。うっすらと笑みを浮かべると向こうもはにかんできた。

「今度はいつ会える?」
「……明後日、」
「愛してるよ」

引き寄せられてこめかみにキスをされる。氷のような感覚。ちゃんと向き合って唇を合わそうとした。その瞬間私たちの間を物凄い勢いで何かが通ってベッドに突き刺さった。――赤い、薔薇。顔が真っ青になる。

「……返してもらおうか、私の恋人を」
「っ、ディーテ……」
「おいで、美々」

駄目、行っちゃ駄目。なのに身体は動く。素っ裸だったけど関係ない。聖衣ではなくワイシャツにスラックスとラフな格好のアフロディーテは本当に絵画のような美しさだった。近付くといきなりぐいっと引っ張られてアフロディーテの胸に倒れ込んでしまった。そのまま抱き上げられ近くにあったシーツを1枚私に巻き付けそのまま部屋を出た。ホテルを出て無言のまま光速で走り出す。向かった先は勿論、双魚宮。シーツを剥ぎ取られ風呂場に押し込まれる。シャワーのコックを開き熱いお湯が素肌に叩きつけられる。

「あ、つ…!ディーテ、アフロディーテ!」
「………っ」

ばちゃん!とシャワーヘッドが大理石の床を転がる。私は同じく大理石の天井と視界いっぱいにうつるアフロディーテを見つめた。私は裸、彼は服。お互いに濡れている。泣きそうな顔のアフロディーテを見て私まで泣きそうになった。

「……美々、私を愛しているのかい?」
「……あいして、いるわ」
「なら、どうして…」

美しく豊かなアフロディーテの髪からぽたりと雫が落ちて私の鼻先を濡らした。それがまるで涙のようで、見ていられなかった。

でも私はまた今日みたいな日を繰り返してしまうだろう。こうでもしないと愛されている、事を実感できないから。







冷えた床が見つめ合う私たちの時間を映す。気持ち悪い感覚が臀部から背中に駆け上がる。「ごめんね、愛しちゃって」嗚呼そんな顔しないでよ。力強く抱きしめられ私は漸く小さく涙を零せたのです。…そろそろ終焉ですか?