そういえば。そう話し掛けられて私は視線を落としていた書類から目を上げた。目の前に机を挟んで座っているのはアレン・ウォーカー。片肘をついてにこやかにこちらを見ている様は芸術品のように美しかった。
「昨日の夜、話してた人は誰ですか?」 「!?」 「僕が気付かないと思っていましたか?甘いですね、僕は貴女のことなら何でも分かってしまうんですから」
怖い…。思わず身体を退いてしまった。だがそれはすぐに叶わくなった。私の手首を、掴んでる。ぎゅう、と力いっぱい。
「いっ、た…!」 「ねえ、聞いてますか」 「アレン…イノ、センスの…左手…や、やめて」 「ねえ、聞いてますか」
爪が肌に食い込む。痛みが鋭く走り顔が歪んだ。それを見て逆にアレンは嬉しそうに笑った。
「貴女は僕が与える愛、喜び、悲しみ、痛み、怒りで感情を出せばいいんです。…他の奴なんかに目をいかせない」
そう言ってアレンは血の滲み出る皮膚に唇を這わせた。小さな痛みがピリリと表面を伝う。それでも優しく労るようにキスを落とす彼に、私は逃げることも離れることも出来なかった。瞳を閉じたアレンに向かい私は複雑な気持ちを抑えられない、微妙な顔をしてしまった。狡いわ、馬鹿。
あたしの傷口はあなたの唇で塞いでね
悪魔さまに。 参加させていただきありがとうございました!
|