(BL表現あり)




静かな常闇の双児宮に1ヶ所だけランタンが点いている部屋があった。私はこの宮でお仕えしているので部屋を与えられていた。寝着のまま小宇宙を抑えながらその明かりを頼りに進むとそこはやはりサガ様のお部屋だった。たしか、今日は双子の弟君であるカノン様が帰ってらっしゃる日…。久しぶりの兄弟水入らずだから私たちも早々と仕事を切り上げたのだった。少し開いた扉からこっそりと覗く。きっと、話に花を咲かせ―――っ。私は心臓が止まるかと思った。2人は並んでもほんの少し髪色が違えているだけで本当によく似ていらっしゃった。そして、固く抱きしめ合っていらした。その光景は衝撃であり、とても美しかった。私はサガ様に淡い思いを抱いていたけどそんなものは2人をみて吹っ飛んでしまった。私に、入る隙間など最早最初からなかったのだ。たしかに今思えば、サガ様を含めた黄金聖闘士様たちの周りには多くの美しい女が仕えているが特に私が働いている双児宮では羨まれる程、サガ様には人気がおありだった。でも美人の女官には見向きもせず黙々とお仕事をされていた。そうか、私たちはむだ足だったのか。自室に戻って私はようやく緊張を解いた。さっきの映像が頭の中で何回も流れる。


***

「おはようございますサガ様、朝食のご用意が出来ております。カノン様は…?」
「おはよう。あいつは仕事があるから帰った」

少し寂しそうな笑みを見せたサガ様は私の表情には気付かず私が用意した朝ごはんに口をつけた。…もう、帰られたんだ。

「どうかしたのかい美々?」
「…いいえ、何も」

不思議そうな顔をされていたが、急に来た小宇宙の通信の為に慌ててご飯を掻き込み準備もそこそこにサガ様は教皇の間へとお急ぎになった。空になった双児宮。今日は本来なら休日の為に専属である私以外の働く者は居ないのだ。独りになって、やはり彼の存在の大きさに気付く。

「私は、諦めなきゃいけないのね」

言葉に出してみてやっと実感が沸いた。溢れそうなナニカを抑えながら私は宮を出た。ここは、彼らしすぎる。テーブルの上には水仙の花、柔らかくも艶やかさが漂う。香りも香しく、まるで彼らを思わせる。






聖闘士★矢の双子座のサガ、カノン夢でした。彼らは本来なら憎み合ったりした関係なのですが…アりプロのナルシスノわールを聞いて書きたくなりました。彼らはお互いを死ぬ前に漸く認めた、と思うんです。それじゃあ悲しすぎる、そう思って書きました。