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ユニテイの瞳は実の姉であるセラフィナを海皇の器にする気であった。冷え切った彼の心、それが小宇宙にまで現れていた。

「何故だ!?君はあんなにセラフィナ様を慕っていたのに…何故こんなことができる…!?」
「それが我らブルーグラードの願いだからだ」
「!」
「素晴らしいじゃないか、最愛の姉がポセイドンとして世界を支配する…姉様だってきっと誇りに思っている!」

高らかにそう言いきったユニテイは珊瑚をまた操り何かを取り出した。強い力がデジェルとエレナの前に現れた。

「まさかその中には…」
「流石、察しがいいな。そうだ!これは海皇様の魂を封じたアテナの壺!デジェルよ、黄金聖闘士の君ならばこの封印、解けるはずだな!?」
「…彼を利用するのか…!?」

私の言葉にニヤリと笑いながらただとは言わないと言った。

「君たちの探し求めるもの…冥王軍に対抗するため君たちがここに来た目的…海皇様自らが神たる力を注ぎこんだ唯一無二のオリハルコン、これをくれてやろう!」
「!!!!」
「悪い話ではあるまい。さあデジェル!友の頼み、聞いてくれ」

デジェルは拳を握りしめた。何故彼はこんなに変わってしまったのだろうか。友として、悲しかった。…覚悟はできた。彼の父のため、彼の姉のため、そしてユニティ本人のために戦うことを。

「断る!その行いは神を、いやセラフィナ様の魂を蹂躙する行いだ!そんなもの聖闘士としても、友としても聞くことはできん!!」
「そう…いうと思っていたよ…!ならば力ずくで言うことを聞いてもらう!!」

珊瑚が四方からデジェルを襲った。凍気を出す隙も与えずデジェルの身体に巻き付いた。…そんなこと、させない!

「グランドクロス!!」
「チッ!小賢しい天使…お前は保険だったがその力も海皇様の封印解除に役立たせよう…!」

また何処からともなく珊瑚が痛みを伴いながら襲ってきた。身体が上手く、動かせない…!そんな中無理矢理流れ込む記憶があった。絶望に満たされた、ユニティの記憶だった。




―神よ…―



***


「神よ…どうすればこのブルーグラードわ救えるのです…どうして我々だけがこんな閉鎖された地で…」

書庫の中央でたくさんの本に囲まれながら座るユニティの肩は震えていた。顔を上げた彼の頬は濡れている。

「ただ凍えて死ぬのを待たねばならないのですか…!?妬ましい、陽の当たる地の人々が…この地に神などいやしないのだ!!」

本を蹴散らすユニティに反応するかのように奥の封印された扉から光と共に何かを感じた。まるで、呼ばれているような……。近付くといつの間にか神殿の中にいて、黄金に輝く鎧を身に纏っていた。思わぬ力に歪んだ笑みが零れた。

「…アトランティス、海底神殿、そして海皇ポセイドン!神は我らをお選びになった!ならば今こそこの私がブルーグラードをアトランティスに匹敵する大国にする!海皇の名の下、ブルーグラードがこの世界を支配するのだ…!!!」

そう言いながらポセイドンの小宇宙を感じる壷に手を伸ばした。アテナと書かれた札を剥がそうとした途端、背中から聞き覚えのある声がした。

「無駄だユニティ、その封印、あと二百数十年は固く閉ざされる。普通の人間に、ましてや海闘士に堕ちたお前に開けることは出来ん!」
「…父様」
「なんという姿だ息子よ。分かっているのか!海皇は我々の監視する地上に敵対する神!そんな力でブルーグラードを繁栄させてなんになる…そんなことは母もセラフィナも望んでなど…」

そこからガルシアは言葉を続けられなかった。胸をユニティの腕が突き破った。もう、見ていられなかった。淀む小宇宙、血の香り、おこがましいかれの野望。…意識が浮上した。凄まじい凍気が辺りを覆った。珊瑚は凍りつき散り散りになった。デジェルの小宇宙が高まりユニティに拳を振り上げた。

「ダイヤモンドダスト!!!!」

デジェル渾身の技はさも簡単にはじき返された。煙で見えなかったが巨大な三又の矛が私たちとユニティの間を阻んでいた。

「私は堕ちてなどいないよデジェル。高みへ昇っただけだ…否!始めから我々ブルーグラードの民は地上で最も優れた民族だったのだ!!」

外にあったポセイドンを摸した像がユニティを守ったのだった。

「…なんと愚かな人間」

思わずエレナはそう呟いた。ガブリエルとこの頃はちゃんと区別出来ていたが、怒りが先走るとどうやらガブリエルの方が色濃く出てくるようだった。エレナの言葉が聞こえたようでユニティはキッとエレナを睨みつけた。

「異界から呼ばれた天使よ、お前も海皇様を封印した一人なのだよ。憎いがその天使の力は気になる、私の無限の知識で海皇と天使の力を得る!」



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