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近付いてくる海龍(シードラゴン)にデジェルは警戒心を強めた。海闘士はポセイドンを護る闘士、アテナともハーデスとも敵対関係である。

「やはり出たか…。お前たちとの一戦は免れぬと思っていた…」
「フッ一戦だと?早まるな、私は聖闘士の…君の協力を得に来た」
「どういうこと…?貴方たちは敵じゃないか」
「アテナの探す海皇様の遺産、それはくれてやろうと言っているのだ」
「!!!?」

まさかの申し出にデジェルは驚きを隠せなかった。勿論エレナもだ。もしかして話の通じる神と闘士なのではとすら思えた。……次の続く言葉をきくまでは。

「その代わり、アテナによって封じられている海皇様の魂を解放する手助けをして欲しい」
「あんた…馬鹿じゃないの?!こんなところでみすみす敵を、しかも神を放すわけないじゃない!」
「黙れ、時の流れの違う女よ」
「……今、なんて言ったの…」
「お前とはまた後でだ。今は聖闘士に用がある」

衝撃が走った。なんで一介の海闘士が私のことを知っているのだ…?しかも、時代すら違うことを。

「この方の体を依代とし海皇様を世界の支配者として完全復活させるのだ」
「…正気か貴様…そんな要求飲めるわけがない。しかも親友の姉を依代にするなど…許すわけにはいかん!!」

珍しくデジェルが怒り任せに小宇宙を爆発させた。珊瑚が粉々に砕け散った。こちら側の珊瑚も簡単に力を高めただけで破壊することができた。…彼にとって、親友、親友の姉は余程大切なようだ。それが、彼の弱みでもあるのだが。

「だがなデジェル、君はそれをしなければならない…約束だからな」

ほうら、やっぱり。

「そんな、死んだはずだ…翼竜に貫かれて…ユニティ…!」

「協力、してくれるなデジェル」


***



「…おいバイオレート」
「はい、アイアコス様」
「野暮用を済ませてくる。その間此処は任せた」

突然の主の外出にバイオレートは目を丸くした。女幹部に言われたからでもなく、他の三巨頭と縄張り争いをするわけでもなく彼を動かすのは至難の技だからだ。

「羽を伸ばしにアトランティスにでも行くか」
「…お待ち下さい、まさかですがあの少女を回収しに行くのですか」

楽しそうに笑うアイアコスを静止させようとバイオレートはまた頭を下げた。しかしその頭には衝撃が走った。蹴り、飛ばされた…?勿論犯人は分かっている。

「バイオレート、お前まさか俺に指図するのか?」
「とんでもない!私は貴方の右翼にすぎません」
「分かってるならいい。あぁお前にはアテナがオリハルコンを使って何がしたいのか探ってこい」

アイアコスは下を向きながら畏まりましたと小さく呟いた右翼を見てふと胸がざわついた。でもその正体を考えることもなく、アトランティスへと向かうべく部下たちに指示し船を北へ向けた。



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