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支度を終えパンドラがラダマンティスを呼ぶと何故かあの天使と共に入ってきた。怒りと恐怖がじわじわと身体を支配した。

「なぜお前が此処にいる!アイアコスの元にいるはずだろう!?まさか、ハーデス様に逆らうのか!」
「ち、違います…!」

その言葉にパンドラは違和感を感じた。前に対峙した時とはまるで別人のように思えたのだ。小宇宙は紛れも無い天使ガブリエル、エレナを示している。否、前は天使の方がしっくりきた。今は、ただの人間。私の、嫌いな。

「パンドラ様、先程バイオレートが来て彼女を預けていったのです」
「バイオレートがだと…?あいつはアイアコスの右腕、こやつが此処にいるのは彼の意思だと言うのか」
「おそらく」

パンドラは考えた。この忌まわしい天使を消せるかもしれない、と。海底神殿には必ず聖闘士がいる。ということは戦いも必須、……上手くいけば聖闘士がこいつを殺してくれるかもしれない。なんていい考えを思い付いたんだろうか…!私にお咎めはなくアイアコスにいくし、一石二鳥だ。

「仕方ない、此処に置いていっても不安だ。我々と共に行ってもらい闘って貰うぞ」
「!よろしいのですかパンドラ様!」
「ラダマンティス」
「…分かり、ました」

有無を言わせぬパンドラの言葉にラダマンティスは跪ずくことしかできなかった。

「…これから何処に…?」
「ブルーグラードから海底神殿へと赴き聖闘士の妨害をする」



***



震えが止まらなかった。あの2人はなぜこんなにも普通なのだろうか。極寒の地シベリア、ブルーグラード。羽を自分の身体を覆わせて寒さを凌いだ。

「此処は誰も居ないようだ。街の中心部に行くぞ」
「かしこまりました」

ラダマンティスはパンドラを抱き上げて冥衣の翼を広げた。エレナもそれにならい羽ばたいた。少しすると攻撃的小宇宙を感じた。でもそれは竜の咆哮により霧散させた。

「パンドラ様、奴らは下の書庫らしいです」
「そこに海底へ行く道があるのだな、行くぞ」

ドレスを翻しパンドラは足を進めた。進む度に雄大な小宇宙の鱗片を感じた。この先に、海皇ポセイドンの眠るアトランティスがあるのだろうか。書庫に入るとそれはすぐ分かった。アテナの護符、それで十分だった。近付くと光がほとばしり、3人を海底へと誘った。

「いいか天使ガブリエルよ。お前は一応はこちら側の者、例え見知った聖闘士がいても闘いは止められぬからな」
「本当に私にも、戦えと?」
「何を今更。戦いから逃げられると思っていたのか?とんだ甘ちゃんだな」

パンドラは嘲笑って矛先をエレナに向けた。

「全てはハーデス様の為よ。お前も私もラダマンティスも、その一駒にすぎん」

逃げることなど出来ないのだ。そう一喝してパンドラは上を見上げた。その瞳はさっきまでの殺気はなくむしろ不安を抱いていた。宮殿はもう目の前だった。


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