2


あれから1週間経った。アガシャに村を案内してもらったり文字を習ったりお花のお世話の手伝いをしたりして過ごしている。今も近くの教会にお花を届けに行く途中である。始めは見慣れぬ黒髪の私を遠巻きに見ているだけの人たちも話せば普通に接してくれた。受け入れて、貰えたようだ。腕に抱えた花を牧師さんに渡して帰ろうと思ったらふと何かを感じた。……暖かい、気持ちになる。私はその何かを辿るようにふらふらと村はずれの丘にたどり着いた。季節は春、花たちが咲き乱れ、生命が活発になっている。そこにいる少女と青年。

「アテナ様!早く帰らねば教皇が心配なされます!」
「大丈夫よシジフォス。あと少しだけ、少しだけだから…!」

え、なんでこんなところにアテナであるサーシャとシジフォスが居るの!?シジフォスは聖衣ではなく茶色のロングコートのようなものを着ている。…暑く、ないのかな。私の気配に気付いたのか2人が振り向いた。

「あ、こんにちは。村の人?」
「!……はい。あの、貴方たちは…」
「私はサーシャよ。彼はシジフォス。よろしくね!」
「え、あ…エレナです」

ニコニコと嬉しそうに駆け寄ってきてサーシャは私の手を取るとシジフォスさんの傍に連れてきた。不安そうな顔をしていたが私が見るとにこりと笑ってくれた。

「俺はよく村に行くが君みたいな黒髪の子は初めて見たよ」
「村には最近来たんです。花屋でお手伝いをしてます」
「お花!!素敵ねシジフォス!」
「そうですねア…サーシャ」

………シジフォスさん、今アテナって言いかけた…。座るとエレナの話をしてとせがまれ私は村のこと、暮らしのことを聞かせた。サーシャはニコニコとそれを聞きながら花を少し摘んでもにょもにょと何かを作り始めた。器用に花たちが1つの作品に仕上がるのをじっと見つめる私とシジフォスさん。出来た!と私に渡したのは花の腕輪。

「出会った記念にエレナ、受けとって!」
「ありがとう、素敵な花輪だね」

手首に通すとさっき感じた暖かさが直に伝わってきた。そうか、これが小宇宙なんだ。ふと村から鐘の音が聞こえてきた。

「いけないっ!アガシャと夕ご飯作る約束があったんだ」
「じゃあもう帰らなきゃなのね…また会いましょう」
「気をつけて帰るんだよ」

サーシャとシジフォスさんが手を振ってくれた。私も振り返して慌てて丘を降っていった。その後ろ姿を見ながらサーシャはポツリと呟いた。

「―シジフォス、貴方も感じましたか?」
「はいアテナ様。あのエレナという少女、なんて大きな小宇宙なんでしょうか…」
「…たまに様子を見に行って下さい」

真剣な表情の主にシジフォスはひざまづいた。

「アテナ様の仰せのままに」



女神との遭遇
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -