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「全く…人間なんぞに転生するなんてさすがの我も思わなんだ」
足をぐいっと鳩尾を踏み付けたまま笑顔で話すサリエルにエレナはうめき声をあげながら狂気を感じた。痛みが、増す。どうやら小宇宙も混ぜて攻撃しているようだ。
「人間は呆気ない…あそこの男は僅かな力で気絶しておる。我等は神に選ばれた、なのになぜ堕ちるガブリエル」
「わた、し…は、ガブリエルでない…!」
「…フン、貴様の意思など関係ない。魂と小宇宙を受け継いだ時点で貴様はガブリエルの存在意義をも受け継いだのだ」
サリエルに蹴り飛ばされ、逃げた部屋へと転がり込んだ。目に黒い法衣の裾が写った。…アローン。
「…目の前で逃すとは…やってくれたな天秤座。まあいい、天使は手に入った、世界の終末ももう見えている。…この巨城ももはや用済み」
「、アローン…っ!」
傍には胸から血を流した童虎が倒れていた。どうやらテンマたちは逃げられたようだ。これで、いい…のか…?多分物語通りに進んでいる、でも私は窮地、奏くんは気を失ってる、世界は危険なまま。
それでも、私は生きている。
不安を感じたまま目を閉じた。一回、自分の意思を曲げる為だ。私は、大きな目的の為に自分を偽る。
「私は…どうすれば…?」
「君には星の守人になってもらう。余の忠実な闘士としてな」
星の守人。ハーデスに絶対の忠誠を誓う強い力を持つ者たち。その中に私を入れようというのか…。
「余の為に、全てを捧げよ」
「ハーデス様に絶対忠誠せよ」
ハーデスとサリエルの言葉に頭を垂れた。
「…さらば地上。余は空よりお前たちを統べてやろう」
目の前にできた長い階段に足をかけ、一瞬だけ辺りを見渡してからアローンは振り向きもせず空の巨城へと向かった。それに続くように私とサリエルも羽を動かし空へと向かった。
裏切り者