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意識を取り戻したハクレイはヒュプノスを封じた聖櫃を見つめた。不安そうに傍に寄るシオンとユズリハとエレナには目もくれず、己の血で汚れた箱を見て笑みを浮かべた。

「やっと…封じたぞヒュプノス。二神を…だが…同胞らはまだ死なせてはくれんようだな…」

そう言って立ち上がり剣を片手に封印の結界の中央へと歩みはじめた。それをただ、見守るシオンの瞳には尊敬や敬愛が混ざり合い、そして悲願を達成した師の生き様に圧倒されていた。剣を床に向け、下ろした。突き刺さる前に、血が舞う。倒れる様がスローモーションのように見えた。

「ヒュプノスめ、人間相手に油断でもしたか…こんなに簡単に死んでしまうのになぁ人間など」
「ハーデス!!」

何が起こったかよく分からなかった。目の前には呆気なく命を狩られたハクレイ、そして暗い小宇宙に包まれたアローン。漸くシオンはハクレイの死を認識し怒りに震えた。

「許せん…許せんハーデス!!」

小宇宙が高まるも結界の力はまだ継続していていつも感じるシオンの力よりも小さく感じた。

「駄目だシオン!」
「スターダストレボリューション!!」

無数の星のような煌めきが拳圧と共にハーデスへと襲いかかった。

「ああ見事な星クズだ。だが…」

袖を翻しただけでシオンの拳が中へと入ってしまった。慌ててシオンの前へと踊り出た。

「…所詮星クズ」
「どいて!エンジェルフェザー!」

力がぶつかり合うがやはり神には勝てず吹き飛ばされた。

「…どうやら己の色を取り戻したようだな」
「う、っ…」

アローンの意識が私へと向かれている間に結界の解除をとシオンが剣へと走るが目の前で剣は粉々に砕かれた。

「ほう、このアテナの剣には余の結界を無効化する力があるのか。使いようによっては結界そのものを消せたようだが…粉々だ」
「ッ、逃げてシオン!!」

シオンの身体が反応する前にハーデスの力が爆発してシオンを吹き飛ばした。次のターゲットはユズリハだった。足がすくむ彼女の前に立つと不思議そうにハーデスが呟いた。

「お前はこちら側に来ると思ってたのだがな…」
「私は…アテナにつく」
「…そうか。ならこれを見てもかい?」

袖を翻し何かを床へ転がした。人のようだが、顔が見えない…え、あれ?

「奏…くん?」
「やはりお前の知り合いか」
「ど…どうして…なぜこの世界に!??」
「こいつの命は余が握っている。…この意味が分かるな」

勝ち誇った笑みを浮かべながら手を差し出すハーデス、否アローン。苦しそうに息を吐く前の世界のクラスメイト…。気持ちが大きく揺れた。アテナにつきたい、アローンを助ける手立てはある、正義と呼ばれる方にいたかった。でも奏くんをこの聖戦に巻き込みたくはない。彼は無関係だから。なぜこの世界にいるのかも気になる。手を伸ばそうとすると光が私たちの間を遮った。

「大丈夫かシオンよ!」

天秤座と天馬星座の登場だった。


天秤にかける正義とエゴ
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