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突然の小宇宙にエレナは目を見開いた。何処かで感じたことのある感覚…。今動かなければ、と何故か思いエレナは城の中に戻り小宇宙を研ぎ澄ませた。もうその小宇宙はなくなってしまったようだ。だがそれと同時に教皇と似た小宇宙を感じ取った。

「まさか…もうハクレイが…!?」

早い展開に慌てて羽を出そうとしたがすぐその考えを改めた。羽は己の小宇宙の固まり、自分の居場所を味方だけでなく敵にまで伝えてしまう。仕方なく走り出すと目の前に雑兵が現れた。彼が何か言う前にエレナは飛び蹴りを食らわせた。壁にのめり込む雑兵、それに目もくれずに下へと降りる階段へ走る。

「はぁ…はぁ…っく…」
「おい!あの女を捕まえろ!」

雑兵が叫び声を上げる。どうやら見つかってしまったようだ。エレナは武器を片手に飛び掛かってきた彼らをジャンプしてかわした。紫水晶のロッドを取り出し勢いを利用して雑兵の頭にたたき落とした。そのまま空中で一回転、側にいた兵の肩を掴み近くにいた敵に回し蹴りを食らわせた。羽を出しジャンプと共に大きく羽ばたいた。小さく詠唱を呟きながら。

「インディグネイション!」

雷が辺りに響く。焦げた臭いと煙が充満する中、小宇宙を頼りに下へと飛んだ。するとやけに結界の力が集結している部屋の前へと導かれた。大きな神の小宇宙も感じる。深呼吸をしてその扉を開いた。

「…エレナよ、お前はあそこから動いてはならないのに何故ここにきた」
「ヒュプ、ノス…っ」
「まぁいいだろう。私の隣で彼らが倒されるのを見ているがいい」
「彼ら…?」

そう呟いたのと同時に何かが上から降ってきて床に激突した。

「儚いな……、!」
「儚い?何がじゃ!?」
「なるほど、前聖戦の雪辱を胸に生き続けただけはある…だが!いくらその執念で心身を鍛えても神の前で愛する者らを守り切れるかな…圧倒的な神の力の前で!」

ヒュプノスの夢、空想を形作る力により隕石が頭上に現れた。

「エレナが世話になったし、お前を思う弟子に免じて慈悲を与えてやってもよいのだぞ。本来私は無駄な争いも血も好まない。どの道ハーデス様に滅される小さな命だ…」
「ヒュプノス…」
「弟子を救いたくは頭を下げよ。その剣を置き弟子共々地上の行方を震えながら待て!」


エレナは首を横に振った。二百数十年もの間、打倒双子神を誓ったハクレイにそのような言葉は無意味だった。弟子も、このことは承知だろう。ヒュプノスは不敵な笑みを浮かべながら腕を振り下ろした。潰される所を見たくなくてエレナは目をつむった。

「ヒュプノスもお前らも何をごちゃごちゃ言っておるのやら…わしは始めから帰る気もお前らを死なせる気もない!!」



眠り神と族長

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