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「人間よ、神たる俺の身に傷をつけた罪は重いぞ。我が神罰、その身に受けるがいい」
「へー怒ったのかい?有り難ぇ、タナトス様直々に虫ケラみたいに殺してくださるってわけか!」

そのマニゴルドの言葉に無表情で冷たくタナトスは睨みつけた。

「うぬぼれるな人間よ。お前たちの命など俺にとっては虫ケラ以下、浮かんでは消える泥寧の泡、塵芥よ。泥溜まりを蹴ったところで「ああそうか」とも思わん」

小宇宙が膨れタナトスからテリブルプロビデンスが放たれた。私と教皇を守るように前へ飛び出すマニゴルドにその力が一気に襲い掛かった。あの黄金聖衣の端々が破壊される。

「バ……馬鹿者!」
「マニゴルドーーっ!」

教皇はアテナの札を、私はグランドクロスを放った。力がぶつかり合い閃光が走った。ふとタナトスに似た小宇宙を後ろに感じた。歪んだ空間、そこからはこの前に会ったばかりの面々。

「ヒュプノス様がお待ちだ、エレナよ」
「オネイロス…?!」

腕を引っ張られた。教皇が慌てて腕を引っ張ろうとするがタナトスからの攻撃を防ぐだけで手一杯だった。私は戦いの途中でその場から連れ出された。



***


「ヒュプノス様、怒ってるからね?ガブリエル、あんたがなんとかしてよ〜」
「わ、私はエレナ…ガブリエルは関係ないわ!」
「…じゃ、殺すわ」
「!!!」

ニコリと笑ってパンタソスは手の平に力を集めた。

「止めろ、ヒュプノス様のご命令だぞ」

オネイロスに諌められ渋々と後ろに下がるパンタソス、身体の緊張を解くと先程連れてこられたハーデス城のとあるベランダにと案内された。そこには椅子と机にティーセット、ヒュプノスがお茶を楽しんでいた。

「ヒュプノス様、エレナをお連れしました」
「ご苦労」
「ヒュプノス…何故私を…」

言い戸惑う私の言葉を遮るようにハーデス城上空の離宮が崩壊を始めた。それと同時にマニゴルドと教皇、それにタナトスの小宇宙が消えた。

「お前をあの戦いに巻き込みたくなかったからだ。…それにしても人間といえど長く生きれば知恵もつくようだな。侮ってかかったあいつが短慮だった」
「あ、なたは…数百年、兄弟である彼に聖櫃の中に閉じ込めるつもりですか!?」
「頭を冷やすのにはちょうどいいだろう。それに神である我々には大した時間ではないのだからな」

紅茶を一啜りして何事もないように言い放ったヒュプノスに怒りを感じた。神なのに、否神だからこその感覚なのだろう。双子、といっても性格はまるで正反対。

「ヒュプノス様、天馬星座らが我らの眠りの結界に入ります」
「ではお前たち夢の番人も配置へつけ。私もまもなく出よう…。たとえ人間といえど丁重に扱ってやるのだ」

ザアッと風が吹きヒュプノスが神衣を纏った。そしてエレナをその場に残し眷属たちを引き連れ何処かへ行ってしまった。



戦いから離反

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