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外に出られたとおもいきや神の通り道が開いており、体がひきずられていった。神衣に近い聖衣を纏っている私ならともかく、たとえ黄金聖衣でもここは入ってくるもの全てを粉々にするだろう。

「ガブリエル、否エレナよ。最後のチャンスをやる…この男にとどめをさせ」
「!!?」
「俺は気が短いのは知っているだろう?早く殺るのだ、そこの人間など俺が死を与える価値もない」

ズルズルとマニゴルドの体がひきずられていく、それでもエレナは攻撃することはなかった。

「…っ、もうよい!さあ、塵となって時空の果てに消えよ!!」
―そうはさせませんぞタナトスよ!―

急に教皇の声がこの空間に響いた。…ありえない、ここは人間が居れたり立ち入れる空間ではないから。バチバチと静電気のような音が聞こえ、空間の歪みから札を手にした教皇セージが現れた。

「ようやくお目にかかれましたなタナトスよ」
「何者だ、人間がなぜこの空間で無事でいられる?」
「私の身がアテナ様のご加護によって守られているからですよ。前聖戦のアテナ様の血で書かれたこのアテナの護符によってな!」

血で書かれた護符からアテナの清らかな小宇宙が流れ、強制的に空間が元に戻った。思わず息をつきマニゴルドへと駆け寄った。

「俺の開けた空間まで閉じるとは貴様…」
「教皇セージ!前聖戦の時は蟹座の黄金聖闘士でございました。もっとも、神である貴方にとっては人間1人の名などどうでもよいことでしょうな」
「教皇…っ」

心強い味方が増えた。だが相手は神、やはりこちらに不利であった。

「あなたとこうして会うため、私は冥王と因縁を持つ天馬星座にこのマニゴルドを護衛につけた。いずれ干渉してくるであろう貴方の小宇宙を辿るためにな」
「全てお前の予想通りと言うわけか」
「神の一手先を読んでこその教皇!」

不敵な笑みを浮かべた教皇はマニゴルドへと近付いた。

「大丈夫か?マニゴルド、エレナ」
「え、えぇ…」
「へッ!こんくらい舐めときゃ治りますよ」

とは言っているが結構な傷である。小さくヒール、と呟く。ふわっと暖かい風がマニゴルドを包み傷が塞がった。

「おーサンキューな。つーかあーー体が重てェな。ハーデス城の結界さえなけりゃあんな奴、楽勝なのによー」
「……それは違うよ、マニゴルド。ここは結界の外なんだ…」
「どうやらここはハーデス城の上空の彼らの離宮、お前がやられたのはお前の実力よ」

冷や汗を垂らしているがマニゴルドが生きているのは神に逆らえる程の力を持っているからであり、凄いことなのである。

「さて、これまでのようにはいきませんぞタナトスよ」
「…愚かな。今さら老いぼれ1人が加わって何になる。何人そろえようと結果は同じこと…タルタロスフォビア!!」

小宇宙が弾けた。タナトスの摘んだ命の成れの果てが身体に突き刺さった。そのままタナトスの深い闇へと引きずられそうになる。タナトスがマニゴルドを冥府タルタロスへ通じる中へと引きずった。手を伸ばそうとするが、届かない。ヤバい…!そう思っていたがふとマニゴルドが笑った。

「積尸気魂葬破!!」

マニゴルドの小宇宙が辺りに広まった。さっきまでたくさんいた魂が一瞬でなくなった。

「何!?」
「私がこやつに授けた技、鬼蒼焔は霊的なものを火種として炎上させる技。そしてこの魂葬破はそれらを火薬のように爆発的に燃焼させる技」
「…じゃあ、霊的な力が強い程技の威力が強まるのか…」
「タルタロズフォビアは封じましたぞタナトス」

タナトスはそれらの言葉は聞かず自分の仮初めの肉体の頬から流れる血を指で擦り、呆然と見つめた。怒りが空気にまで伝わってくるようだった。

「どこまで読んでんだか…ホント恐ろしいほど頼りになるお師匠だぜ。…チェックメイトかな?タナトス様」




激突する力


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