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眩しさからつむっていた瞳をゆっくり開くとパンドラの目の前には何もなかった。否、ただ白い空間、建物もなにもない白い床だけがある気の遠くなるような広い空間。

「な、なんだここは…」
「此処は私の空間」

バッと振り返ると白い羽根を背にしたエレナが居た。槍を構えるパンドラに向けるのは紫水晶のようなものが付いたロッドだった。

「その歪んだ考えを私が正してあげるよ」
「歪んいでる、だと…?私のハーデス様への愛を歪みなどと愚弄するのか!」
「だってそうでしょ?パンドラという地位、立場が貴女を冥王に、冥界に囚われている…」
「!そ、んなこと…」
「ないって言い切れる?」

反論しようとしたがパンドラの口から言葉は出てこなかった。今生のハーデスへの不信感、双子神、信じられる要素はなかった。一瞬ハーデス様を盗られた時を思い出した。…何を、信じれば…。俯くパンドラは聞きたくないというかのように両手で耳を塞いだ。カラン、と槍が床に落ちる。嫌だが近付いてその上からまた「言い切れるの?答えてよ」と言い寄る。罵声より質の悪い言葉を浴びせているとキン、と頭痛がした。―きっとこの空間を無理矢理こじ開けたからだろう。この空間はヒュプノスから貰ったものだ。神の扱う空間なので彼らより力の劣る天使にはキツいのだ。…早く決着を付けてしまおう。ロッドを振り上げる。だがそれはパンドラへと当たらず誰かに奪われた。一気に小宇宙が4つ増えた。振り向く前にガバッと抱きつかれた。

「える〜!がぶりえる〜!」
「……え、」
「久しぶりだな、ガブリエル」
「お久しぶりでございますオネイロス様、…え、ええええまさかパンタソス様?!女!?」
「そうよ!能力を使って美貌を手に入れたの」

嬉しそうにぴょんびょん跳びはねる。…知ってはいたが、驚いた。どうやら自分の記憶とガブリエルの記憶が混合して複雑にしていた。

「ほら、その女は戻してやれ。俺たちは眠りの空間に行くぞ」
「今はエレナだよね〜?エレナの聖衣を返すわ」

思わぬ言葉にパンタソスを引っぱがしてじっと見つめるとくすぐったそうに笑ったパンタソスがいた。

「ほら、早く行くぞ!ヒュプノス様もお待ちだ」
「お前は無理矢理この空間をこじ開けた。身体もキツいだろう」

モルペウスとイケロスに急かされる形で歪みからパンドラを放るとエレナは4神と共に夢界への扉を潜り抜けた。


***


「あああ会いたかったぞガブリエルーーーーーーーーーーーーーっ!!」
「ぐっ、カハッ…!」
「タナトス退け私の番だ」

ぎゅううううう、ミシッ。してはいけない音がした。この2人は、いや神は何をしたいんだろう。

「ちょ、待ってくだ…オエッ」
「クスクス…」
「…笑ってないで助けたらどうだパンタソス」
「そーいうイケロスがやりなさいよ。私、忙しいんだから」

モルフェウスとオネイロスのお陰で私は双子神から離れることができた。…ほんといい奴だ2人は流石苦労人。

それでもタナトスとヒュプノスの睨みに気付くとすぐに奴らは私を生贄として捧げた。そして私は数日間、双子神の離宮から出ることができなかった。




力の鱗片


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