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私は四神を調べる為に人馬宮に入り浸った。シジフォスも忙しいはずなのに任務の合間を縫って書を探してくれた。しかも今日はご飯までいただいてしまった。夜もふけ始めた頃双魚宮に帰るとちょうど慌ただしく外へ行こうとするアルバフィカと鉢合わせた。こんな夜遅くに…?

「アルバフィカ、何処にいくの?」
「冥闘士たちからの攻撃に備え魔宮薔薇を聖域の周囲に張り巡らす」
「!シオンと童虎が帰ってきたのね…」
「ああ…童虎のほうは弟分を亡くしたらしく悔しがっていた」

眉間に皺を寄せアルバフィカはハァとため息をついた。聖域周辺に魔宮薔薇を敷き詰めるなら時間はかかるだろう。もうアテナが冥闘士たちが出撃してくることを予測したのだろう。それからアルバフィカはエレナに教皇宮に行けと告げた。どうやら教皇セージが呼んでいるそうだ。


「お呼びですか?」
「…君に聞きたいことがある。エレナにではなく、ガブリエルとして」
「……」
「わしらのことを覚えているか?」

教皇の座る椅子の後ろにあるカーテンから似たような感じ、小宇宙を持つ老人が出てきた。

「……あ、」
「ジャミールの長ハクレイじゃ。久しぶりだなぁ、二百数十年ぶりか」

自分でない記憶が湧いてくる無意識に口元が上がる。

「なぁんだ、生きていたのか。あの時の蟹と祭壇座は」

固まる2人を見て思わず笑ってしまった。


***


ハーデスの器だった少年が血を吐いたところで漸く異変に気付いた。振り返ると仲間が血を流し倒れ絶命し、手をついて座り込んだアテナの口元から血が流れ出た。有り得ない、俺たちは勝ったはずでは…。辛そうにも立ち上がった女神は堅い表情で空を見上げた。

「なぜ貴方たちここにいるのです。――死と、眠りよ」
「勿論、ハーデス様の魂を迎えにきた」
「あの方は冥界の王、高貴な魂よ。薄汚れた地上で剥き出しのまま過ごさせるわけにはいかない」

まただらりとアテナから血が流れる。

「アテナ様!」

ハクレイが小宇宙を高め飛び出した。タナトスはそれを虫けらを見るように不愉快そうに指先に力を込め、放った。巨大な力、アテナがハクレイの前に飛び出し守った。それをも小馬鹿に笑い更に巨大な小宇宙をアテナに向けた。ニケにありったけの力を爆発させタナトスの攻撃を空へと逸らした。空が紫に光り衝撃波が地上を襲った。アテナ!とハクレイとセージは叫んだ。2人の呼びかけに少しだけ振り返り「絶対に、生きるのですよ」と笑うアテナ。嫌な、予感がした。

「ふん!さすが戦女神、立ったか…だがこれまでだアテナ」

タナトスは不機嫌な表情を変えぬまま手を左方に翳した。すると神々の通り道が現れそこからサッと金が走った。黄金の鱗紛が舞う。

「待たせたな、ガブリエルよ」
「お早くハーデス様の後を…」

「貴女は…ガブリエル!何故双子神の元に居るのです!?」
「黙れアテナよ」
「我々も早くハーデス様の後を追わねばならぬ」

ハクレイとセージが見たのは双子神の傍に寄り添う美しい6枚の羽を携えた女だった。その表情は優れずアテナを見つめていた。

「ほら、行くぞガブリエル」
「!は、はい」

3人がふわりと通り道へと身体を向け進む。だが後ろからくる強大な小宇宙に珍しくヒュプノスが舌打ちをした。

「愚かな女神め、ここまで追いかけてくるとはな」
「アテナ…」
「ガブリエル!貴女も争いは好まないはずです…こちらに戻りなさい」
「愚行な!死ねアテナ!」

双子神の攻撃がこの異空間に広がる。辛うじて避けるも傷だらけのアテナから血が吹き出る。

「アテナ…っ」
「ガブリエルよ、何を気にしている。あれは我らの敵」
「ハーデス様の為にも居てはならぬ存在だ」

不意に嫌な予感が弾けた。戦女神の小宇宙が急速に近付いてくる。タナトスの目の前へと身体が勝手に動いた。

―ドスッ!

衝撃と音の後に激痛が走った。おそるおそる胸元を見ると黄金のアテナのニケが突き刺さっていた。

「あ…」
「「ガブリエルっ!!」」

崩れ落ちる身体をヒュプノスが支える。力が、入らない…。お願い、アテナを、ヒュプノスとタナトスを、恨まないで…。中途半端な私が悪いのよ…。意識は身体と供に異空間の中で霧散した。


***


教皇宮に静けさが広かった。先に口を開いたのはハクレイだった。

「それてはお前の聖衣の話に矛盾が生じるぞ?」
「前々から言ってあった、もしもの時には四神に聖衣を任せると」

なるほど、とセージが呟く。先程までの殺気は幾許か無くなり雰囲気もましになった。エレナはため息をつきたいのをなんとか堪えた。全くガブリエルとやらはなんて天使なんだ…!厄介事を私に押し付けてきて…。

「これからは我らの目の届く所にいてもらおう」
「…あっそ」



鳥籠の中




OVAの内容を入れてみました^^まじアテナ色っぽい器の少年ハスハス!
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