7


遠くで冥王の小宇宙が大きく弾けるのを感じた。それと同時にいくつかの小宇宙のぶつかり合い、消失。

「……テンマ」

私はサーシャに会いに行こうとしたがもうお休みになったと跳ね返された。…まあ、いいや。後何日かしたらシオンと童虎が帰ってきて報告するだろう。私はふと自分の聖衣を取り戻すことを今の最重要課題にした。…たしか、夢の四神の夢界に預けていたような気がする。ならばと教皇宮からそのまま人馬宮へ下る。…たしか、シジフォスとエルシドが四神を調査していたと聞いた気がする。そこの資料をこっそり拝借しよう。今丁度アテナ神殿の警護にあたっているから手薄なはず…。思惑通り簡単に人馬宮に入れ、四神の調査結果の書かれてている書物のある本棚へと辿りつけた。手短な本を一冊手に取り表紙を開く。パラパラとページをめくる度に彼らとの神話の時の思い出が蘇る。1番よく懐いていたパンタソス、毎日遊んでと言って元気のいいイケロス、幼いのに労ってくれた優しいモルフェウス、感情を出すことは不器用だったが私にべっとりだったオネイロス―――。ぱたん、と本を閉じて息を吐く。

――攻撃的な小宇宙?!

身体を動かそうともこのままだと書物が破壊されてしまうので片手で受け止めて相殺を試みる。入口に立っていてこちらに拳を向けていたのは山羊座のエルシドだった。

「…やはり、お前は信用に値しない。例えアテナ様が信じておられてもだ」
「………エルシド、」
「此処には何用だ。夢の四神のことを知って何になる?」

構えを解かないでじりじりと迫るエルシド。警戒、されたようだ。

「私の聖衣…彼らに預けてあるんです」
「!お前の聖衣…だと?!」
「そうです。きっと用心深い彼らだから奥深くに保管してくれてると思うんですが…今の立場からしたら…戦わざるを得ない…出来ればそれは避けたいんです」

戦うためには、それなりに準備が必要だから。エレナの言葉にまだ警戒はしながらも右腕を下ろしたエルシドは少し考えてから1冊の本をエレナに手渡した。

「1番深いのはモルフィア、そこにお前の聖衣はあるのだろう」
「…この本は…?」
「モルフィアについて調べた文献だ、今日だけ貸そう」
「あ、ありがとうございます!」

本をぎゅっと抱きしめ頭を下げると不思議そうな顔を向けられた。

「…天使が人間に、頭を下げるとはな」
「…失礼ですねぇ、誠意を見せたんですー」

そのまま人馬宮を後にしようとするとまたエルシドが何か言ってきた。

「…え?」
「……、アテナ様を困らせるなよ」

それだけ言い放って私より先に宮を出て自分の磨羯宮へと昇っていってしまった。

「……天使、か」

ちゃんと覚醒しても、私は私のままで居られるのかな?ふと過ぎる不安を拭うように人馬宮の階段に座り込み古びた書を開いた。


疑惑、下準備



エルシドはまだ警戒しております。不安要素を女神に近づけたくないんでしょうね。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -