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汗をかきながらはあはあと傍らで息を乱すエレナを見ながらシオンは感心した。

「この短時間でよくやった。今日はここまでだ」
「はあ…や、やっと…っはあ…」
「風呂を使いなさい、その間にアルバフィカを呼ぼう」
「す、いません…」

シオンの言葉に甘えて風呂を借り鍛練での汗を流す。出ると服がもう綺麗な状態になっていた。…小宇宙って何でもアリ、なんだな。と思いつつ感謝しながら着替えて白羊宮を出ると外にいたシオンがこちらを見遣った。

「あー…悪いがエレナ…」
「…?どうかしたのシオン」
「アテナからのお言い付けでな…自力で十二宮を登れと」
「……えええサーシャちゃんんん!!?」
「黄金への挨拶がてらだと思え。…ほら、早くいかないと日が暮れるぞ」

ほら、と背中を押され仕方なしに石段を登り始めた。……あの、上…遠いんですけど…。



―金牛宮―


せっかく流した汗がまた額に滲みはじめたころようやく第二の宮、牡牛座の守る金牛宮に辿り着いた。はあ、と一息つくと上から笑い声が聞こえてきた。

「ご苦労だったなエレナ。ようこそ我が金牛宮へ」
「こんにちは、アルデバランさん…」

もう疲れきった顔をしている私の元まで来てくれ――持ち上げられた。

「?!」
「すまんな、これだけは確認したいのだ。…お前はアテナ様の味方か否か」

真っ直ぐに見つめるアルデバランさん。忠誠心の顕れ、なのだろう。私は記憶を手繰り寄せる。……アテナとハーデス、私はどちら側なのだろうか。

「…私はサーシャが、アテナが好き…。それだけでは駄目ですか?」
「……まあいいだろう。金牛宮を通る事を許そう。だが次の宮は気をつけろ、一筋縄ではいかんからな」

私を下ろしてにこりと笑って頭をわしゃわしゃと撫でてくれた。…お父さんみたい。私はアルデバランさんに手を振り次の宮へと向かった。今は誰も居ない、双児宮に。アルデバランさんは、その次の巨蟹宮を気をつけろとのことだろう。…まあ、形相悪いし、ねえ。




―双児宮―

無人の宮のはずだが女官たちが掃除しているのか、ちゃんと手入れが行き届いていて埃はなかった。だが温かみは一切なく、暗い宮はなんとなく怖かった。早足にそこを去ろうとする。

「―――!?」

背中に突き刺さった何者かの視線。慌てて辺りを見渡すが誰も居ない。…気のせい、だろうか。いや、それにしては殺気があった。私を良しと思わない聖闘士?―それもありえない。彼らと小宇宙の大きさが違いすぎる。…まさか、黄金の誰か?まだ小宇宙を上手く扱えないから小宇宙から誰かを特定できない。…不安と疑問は残るが早く上に向かおうとすぐに立ち去った。

「あの小娘が天使、か…」




―巨蟹宮―


「よぉ、おチビちゃん」
「…教皇にお花の件話し」
「分かった分かった!悪かったって!な!」

見た目は怖いがあわあわするマニゴルドのギャップに思わず笑みが零れた。それを見て舌打ちをすると投げやりな態度で私の頭をぺしっと叩いた。……。

「……天使ねぇ…俺はンなの信じてなかったんだがなあ…」
「…羽根、出せます」
「へぇ、本物ってワケか。おら、とっとと行け。村での話はすんじゃねーぞ」

…意外とあっさりマニゴルドさんは巨蟹宮を通してくれた。私はそれには感謝して次の獅子宮に向かった。だから私はその時のマニゴルドさんの何とも言えない表情に気付かなかった。



十二宮巡り1



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