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アテナの徴集から帰ってきたアルバフィカは直ぐに私に小宇宙を自在に使えるように訓練をすると宣言した。小宇宙や組み手に関してはシオン、それからシジフォスが担当らしい。

―シオン、今からエレナを白羊宮へ連れていくぞ―
―嗚呼、分かった。…だがお前が名を呼び捨てるとはな…―

少し楽しそうに小宇宙通信を切った相手の顔を思い浮かべるとアルバフィカは少しイラッとした。…苛つい、た?珍しい自分の感情に戸惑いを覚える。私と毒薔薇、そして先生…。それだけで良かったのに、彼女という一滴が世界が鮮やかに広がったように感じた。まだ聖域の空気に馴染めず身体が怠いエレナを抱き上げ早く下の宮へと急ぐ。すれ違った何人かの聖闘士は人間に触れ、運んでいる魚座の姿に驚きを隠し切れていなかった。その事はアルバフィカ自身も驚いている。だが朝になって目覚めたエレナのまるで重力が加算したかのように動かしづらいと訴える小さな身体を必死に動かす姿を見て、思わず下まで運ぶと自ら申し出たのだった。その時のエレナの表情は見物だった。思い出すだけで笑えるが、それは内緒だ。きっとこの優しくて強がりな少女は不機嫌になるだろう。嗚呼聖戦も始まるのになんでこんな穏やかな気持ちなんだろうか。…エレナの小宇宙はそんな気持ちにさせるのだろうか。ひゅうと猛スピードで駆け降りる中そんな事をぼんやりと考えているといつの間にか白羊宮の前へと辿り着いた。2人の小宇宙に気付いたのか中からシオンがマントをたなびかせながら出てきた。エレナを抱き上げていたアルバフィカを見て少し嬉しそうに笑うシオン。そんなシオンを見て慌ててエレナ降ろす。

「すまないな、アルバフィカ」
「…いいや、任せた」

それからエレナに向き直る。

「帰りも迎えにこよう。シオンに頼んで通信をしてもらえ」
「ありがとアルバフィカ!任務頑張ってね」

すぐに背を向け素っ気ないように見えたが少し手を振ってくれた。…これは、進歩なのでは?シオンは同胞の変化の兆しに喜んだ。

「さあエレナよ、今日までに小宇宙を使えるようにしてもらうぞ」
「す、スパルタ…」
「戦いはすぐだ、のんびりしている暇はないのだ」

そう言って白羊宮へと戻っていった。慌ててその後を追って宮の中に入ると急に攻撃的な小宇宙を感じた。慌てて避けると今立っていたところの地面はぽっかり空いていた。ちょ…!なにこのデジャヴュ!自分の宮壊していいの!?シオンは急な自分の技への対応の早さに驚いたがエレナの跳躍能力にも目を見張った。…ただの少女だと思っていたが、どうやらガブリエルとやらの加護があるようだ。

「しししシオン?!」
「今のはいい反応だ。どうやらすぐに使いこなせそうだな…鍛えがいがある」
「え、えええ!そ、それよりシオンはやることがあるんじゃないの…っ?」
「今は白銀と青銅が偵察に行っているのでな、鍛練あるのみなのだ」

それから十二宮の1番目である白羊宮は空けておかない方がいいらしい。つまり、まだ時間はあるようだ。かかってこいと言わんばかりに拳を握り構えるシオンに向かい私は筋肉痛覚悟で強く地を蹴った。



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