8


私はまるで罪を犯した人間のように黄金に囲まれていた。正確には11人の黄金聖闘士と、女神と教皇に。それらから送られてくる視線に含まれているものは様々である。

「こいつ、花屋の…!」
「おやマニゴルド、知っているのか?」
「?!な、ちげーよお師匠見かけただけだ!」

…あの花の話はしないほうがいいようだ。ものっすごく睨まれてるし。蠍も興味深そうに私を見ている。

「エレナ、アテナだと黙っていてごめんなさいね」
「い、いえ…」
「シジフォスから貴女は熾天使ガブリエルだと聞きました。それは本当ですか…?」
「はい、この水晶からも小宇宙が…」

腕を差し出し紫水晶を見せる。視線がそれに集まる。そこからは黄金たちを遥かに超えた力、小宇宙を感じられた。水瓶座の黄金聖闘士、デジェルが眼鏡を優雅な仕草で直す。

「熾天使ガブリエル…私は様々な書物を読んできたが初めて知りました、アテナ様」
「そうでしょうね…。彼女は歴史からは抹殺された存在ですから」
「抹殺…?」
「双子神のヒュプノスとタナトスの手に堕ちたのです」

思わぬ敵に空気が張り詰めた。教皇からの凄まじい小宇宙の膨れにも驚かされたが、何よりもそれを知っていたかのようなエレナの態度にも驚かされた。サーシャとしてではなく女神アテナとして尋ねる。

「…知っていたのですか?」
「詳しくは…でも1ヶ月程前に彼らが接触してきました」
「なんと!この聖域のお膝元にまで奴らは来ていたのか!」

前聖戦の痛手を思いだし歯軋りする教皇。エレナは手の平をぎゅっと握った、それしかできなかった。こんな空気の中で、過ごしていける自信がない。

「ではまだ覚醒はしていないのですね?」
「覚、醒…?」
「思いだし、使いこなせるかです」

今まで握っていた拳を開き手の平を見つめた。少し土が付いていて、さっき力強く握り締めていたためか血がついている自分の手。小宇宙は解る、でも使えるかは分からない…。首を横にふるとアテナの指先がそっと前髪を掻き分けトンと中心に触れた。温かいものが流れてくる。でもそれはすぐに激痛を伴うものへと代わった。

「い、いやぁあぁあ!!!!!」
「皆よ離れろ!」

教皇の慌てた声に聖闘士はアテナを守るように飛びずさった。彼らの目の前でエレナ身体から光と小宇宙が荒れ狂う暴風のように発せられた。…もし一歩でも逃げるのが遅かったら。何人かの黄金たちは冷や汗を流した。自分たちの女神とも劣らない小宇宙が教皇の間を満たす。だがアテナの小宇宙とは決定的に違うものがあった。――死、冥界のような暗く静かなものも含まれていた。髪も少し赤茶がかった黒になった。当の本人は突然の力の解放に意識を飛ばしたようで目は閉ざされていた。まだ彼女を中心に小宇宙による強風が渦巻いている。アルデバランが言葉を漏らす。

「こ、れは…」
「天使化の副作用、でしょうか…。私も初めて見ました」

すぐに起きなさそうなエレナを見つめながらアテナはこれからについて考えだした。例え強大な力を持っていてもそれの使い方はそう簡単にいくものではないからだ。傍に寄って座り込みエレナの髪を撫でる。パチリと一瞬静電気が走ったような違和感が走った。

「…すぐに対処できるようにアルバフィカの宮で世話をしてあげて下さい」
「アテナ!お言葉ですが私の身には…」
「彼女なら大丈夫です、…いいですね」

女神はアルバフィカの言葉を遮り決めてしまった。アルバフィカは不服そうに頭を下げた、視線を少しエレナに送りため息をそっとついた。


聖域に天使が舞い降りた日であった。


覚醒





出てきてない黄金さんごめん(;_;)

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