私の父はとあるマフィアのボスだった。つまり私は、次期ボス候補。父はボンゴレという巨大マフィアの傘下に入っていたけれど、揺り篭というヴァリアーの暴動に呆れて抜けたらしい。父は仲間を増やし、ボンゴレに入らなくても自分たちを守れる程度の大きさまでファミリーを拡大、強化した。それでも闘争は激しくなり、私は幼くして母と2人、日本へとやってきた。

ものごころついたときから自分の身を守る術や、殺しのことを学んできた私にとって平和なこの国は衝撃だった。そして、たくやお兄ちゃんとツナに出会った。私は平和に浸っていた。幸せだった。
でも、たくやお兄ちゃんは死んだ。私のせいで。


目の前で倒れるお兄ちゃん。公園で遊んでいた私にとっては突然すぎる出来事だった。ふわりと赤が飛ぶ。それでも私を抱きしめる力を弱めずに、銃を持った黒い人から隠した。…きっと奴らは日本に裏切り者の父の娘が逃げたと嗅ぎ付けたどこかのファミリーの刺客だ。私はすぐに暗殺者がここを嗅ぎ付けたんだと幼い頭ながらも察知した。目の前で命の灯が消えてゆくお兄ちゃん。身体が、動けない。やがて、暗殺者も消えて母様が部下を連れて来たころには身体は冷たくなっていた。私には為す術はなかった。

「お、にいちゃ、ん…?」

初めて死を目の当たりにして私はただお兄ちゃん、たくやお兄ちゃん、と馬鹿みたいにただ呼び掛ける事しかできなかった。まだ、お兄ちゃんは生きてるはず、どこかでそう思っている自分がいた。

「美々、逃げるわよ!!」
「母様、たくやお兄ちゃんはどうなったの…父様はまだ?」
「……っ」

何も言わずただ涙を流して私を抱きしめる母。そして私たちは並盛を去った。


***


私はツナにこの事を打ち明けていない。
たくやお兄ちゃんが私のせいで命を落としたこと。
私が次期マフィアのボスだということ。

優しいツナにはこんな汚い私を見せたくなかった。だから、正式に継ぐ19歳…つまり、高校を卒業するまでは、この暖かさに浸っていたかった。

これは私の我が儘。母様も守護者のみんなも笑って許してくれた。彼等も、私がこれからたくさん困難に直面する事をしっている。だから最後くらい、女の子として過ごさせてくれているのだと思う。だから、私とツナの関係は、あと1年と半年。なにも起こらず、このまま平穏に過ごしたい。ただそれだけが私の願い。

だからとうさまを殺したリボーンをみのがしているのだ。