ハニーブラウンの髪が夕暮れで眩しく光り、まるで黄昏色のように変わる頃、私たちは――――――

「あー物理と化学と生物と英語と数学と現文と日本史と世界史どーしよー!」
「美々…それ全教科じゃん」

冷静なツッコミに私は机にへばりついていた身体を起こした。かろうじて握りしめていたシャープペンシルを動かし、物理の問題を解く。…………ダメ、頭がこんがらがってきた。…は、運動の方向はともかくこれの運動量の計算?やっべ、自分で言っててよく分かんなくなってきたよ。

「うーーーー」
「頑張ろうよ、コレが終わったら当分はテストないよ?」
「だからってまだ中間だよ!?期末だってヤバいんだからぁあぁあぁ」

今日はツナのお母さんに夕ごはんをご馳走になる予定である。でもまだ準備が終わらないとメールが来たので、私たちはファミレスのドリンクバーでねばって勉強をしていた。私はなんとか文系が得意、ツナは英語と理系が得意。だからお互いに教えあっているのだ。

「ほら、コレが終わったらうちで母さんがハンバーグ作って待ってるから」
「!頑張る!」

急に姿勢を正して机にかじりつくように勉強し出した私をみてツナは小さく笑って自分も問題集に目を落とした。

「美々、これは?」
「えーっと…あぁこれはねぇ、水に毒を入れられないためにこんな高いとこに水路っぽいの作るんだよー」


***


「あらまあツっくんったら!可愛い彼女さんね〜」

久しぶりに再会した、私に気付かなかった沢田奈々。つまりツナのお母様。どことなくツナに似ているお母様だと思った。

「え、あの美々ちゃん?母さん全然分からなかったわ〜。ホント美人になったわねぇ」
「ご、ご無沙汰です、おばさま」
「母さんっ!」

ツナのあの慌てっぷりには逆にびっくりしたくらいだった。そんな息子には気にも暮れず腕を振るった料理が次々と並べられた。一人暮らしなのでこんな風に食べるのは久しぶりだ。

「はいどうぞ美々ちゃん、たくさん食べてね」
「はい、いただきます」
「もう、こんなに可愛い子がツっくんの彼女なんて母さん今でも信じられないわ」
「…………母さん酷いよソレ」

心なしか、ふわふわの髪がペタンと垂れ下がった。クスクス笑ってると、玄関が開く音がして賑やかになった。扉が開く。

「あらママン、今日は豪華ね」
「オレっち腹ぺこだぞー!」
「ランボ、走るダメ!」
「僕の大好きなハンバーグだ」

ツナの家にはなぜかマフィア絡みの人が多い。今部屋に入ってきたランキングフウ太、毒サソリのビアンキ、イーピン、ランボ、そして―――――

「よっ、ダメツナには勿体ねーな美々」
「……こんばんはリボーン」

箸を持つ手が震えた。最強のヒットマン、アルコバレーノのリボーン。