うちのクラスにげっそりと顔を歪ませたツナがやってきた。私たちのクラスは2こ離れているのだ。ツナの隣には2人の男の人。どうやら1人で私に会いに行きたかったらしいけど、今回は撒けなかったらしい。1人は獄寺隼人君、というヤンキーみたいだけどなぜかツナの事を「十代目」と呼び、慕っている。もう1人は―――――

「よっす、雨音さん!」

山本武君…。あの人に、たくやお兄ちゃんの、面影がある人。


* * *


ツナは似ていないというかもしれない。でも私は覚えている。笑ったところとか、雰囲気が似てる。

たしかにお兄ちゃんのほうがどちらかといえば運動より勉強派で、少し静かで、繊細だったと思う。芸術が好きでよくカメラを持っていた。――――そして、私の初恋の人。

対する山本君は、野球部に所属、未来の部長とまで呼ばれる並高のエース、運動の才能があって(、つまり勉強はからきし)、ハハッと太陽のように笑う人。

似てない、否似てる。
なんだかんだ違う、けど似ている。
でもその話をツナにするつもりはない。この不思議な懐かしい、気持ちは私だけのものだ。

「雨音さん、今度ツナと獄寺と野球の試合、見に来てくれよ!」
「あ、名前で呼んでもいーって!私もそうするし…」
「ホントか!?じゃあ美々って呼ぶな」

嬉しそうに私の頭をぐちゃぐちゃなで撫でながら山も――武は笑った。ついでに獄寺君も名前で呼んであげる!、そう言うとそっぽを向きながら勝手にしろと言われた。…頬が赤い。どうやら照れているようだ。わらい。彼らのその横で少し機嫌の悪そうな私の彼氏さん。

「………?ツナ?」
「……、な、んでもないよ!」

あ、もしかして嫉妬…?本当に独占欲だけは強いなあ。でもそこも嬉しい。思わずふわふわしたツナの髪を触ってみた。少しだけ目を見開いた彼は、擽ったそうに目を細めた。

「んで、なんでうちのクラスに来たの?」
「んー美々と仲良くなりたくてなー!」

……。私は苦笑を零した。普通、付き合っている人の目の前で仲良くしたいなんて言える?ほら、ツナもちょっとご機嫌ナナメだよ?武も気付いたのか慌ててフォローを入れた。

「ツナ!別に深い意味なんてないから、な?」
「山本…大丈夫だよ、俺は」
「十代目に気を使わせてるんじゃねーよ野球バカ!」
「まあまあ、隼人も落ち着いて…」

私が諌める立場になると申し訳なさそうに隼人がペコリと頭を下げた。………私より、隼人って下の立場なの?

「当然です!美々さんは将来ボンg―――」
「「あーーーーーーー!!!」」

急にツナと武が慌てて声を張り上げた。……何を隠したんだろう。気になる。でも結局答えてはくれなかった。