「美々っ!」
「うわっツナ!今日は一緒に帰れるの?」
「うん、獄寺君と山本撒いてきたから大丈夫!」

ツナはニコニコと微笑みながらそっと私の手を取って教室の扉を開け、廊下に出た。…これがあの、ツナだなんて…ほんとに変わったな。前はすぐに泣いちゃうくらい弱くて、女の子っぽくて、…………たくやお兄ちゃんと私の後ろばっかり付いてきた子だったのに、ね。

今じゃ私より大きくて、ふわふわ笑って、かっこよくて頼りになる男に成長していた。時折見せる憂いをおびた表情、あどけない仕草、今では全てが愛しい。

私たちは帰る前にいつも寄るところがあった。図書室は静かで、あまり人が来ないから2人だけの時間を楽しめる。

私たちだけの空間で、私を膝の上にちょこんと乗っけて彼はそっと私を抱き寄せる。すぐに真っ赤になる私を可愛い可愛い、とおちょくるツナ。…なんか、ズルい。ツナばっかり余裕で、私だけドキドキしちゃうなんて。

――――ちう。

不意打ちにほっぺたにキスをしてみる。

「え、えっ、な、…えっ!」

右頬に手を当てて、耳まで真っ赤にする綱吉がいた。――勝った、にんまり私は笑ってぎゅっと背中に手を回した。

負けたなあ、とクスクス笑うツナ。こんな日常がいつの間にか当たり前になっていた。ずっと続くと思っていた、5月の夕方。

帰り道、少し早く来た梅雨が私たちに襲いかかった。勿論傘なんて持ってない私たちは慌てて走って近くのコンビニに駆け込んだ。間延びした店員の声に迎えられて入ったコンビニにはビニール傘を求める人がちらほらいた。傘の置いてあるところに行くと1本だけしか残っていなかった。

「あちゃービニール傘1本だけかあ」
「とりあえずコレ買って帰ろうか。家まで送ってくよ」
「…いつもうちの方が遠いのにごめんね?」

大好きな美々の為だから。そうはにかみながら答えるツナにキュンとしてしまった。嗚呼もうどうしてこんなにも心揺さ振れる温かな恋なんだろうか!少し狭い傘の中で相合い傘をしながらそっと幸せを噛み締めた。