私はまさか、彼がここに来るなんて思ってなかったので目を見開いた。ついこの間、ハニーブラウンと別れた気がする…。でももう1年くらい経っているのだ。お互いにマフィアのボスとして、成長している。だから、昔付き合ったことがあるからと、情を出す程、馬鹿ではないはず。
私は無表情で対応することにした。

「お久しぶりですね、沢田綱吉。いや、ドンボンゴレ」
「美々、他人行儀はやめてよ。仮にも恋人だったわけだし」

だった、と過去形で言われてズキリと胸が痛んだ。…この痛みは抱えてはいけない、捨てなければ。口元だけ笑みを象った。

「それは、貴方がボンゴレ関係者だと気付かなかった私の落ち度。後悔で一杯だわ」
「てめぇ!十代目に向かってなんて無礼だ…!」
「隼人黙って」

あ、いつの間にか呼び捨てになってる…。他人事のようにそんなことを思っていると急に綱吉が声を荒げた。

「どうして…!急に…!」
「……は?何がよ」
「美々の行動全部だよ!別れもイタリア行きもボンゴレ同盟ファミリーの殲滅も…!」
「……嗚呼、全て必然だったからだよ」

にこり、と意地悪そうな笑みを浮かべてやった。そう、私は必然なことしか実行していないし、それ以外は実行する気もない。

「私は、貴方を許さない」
「俺は美々に何もしていないのだけど」
「無知だったから、罪はないとでも?その血筋自体が、罪なんだよ!!」

思わずカッとなって叫んでしまった。許せなかった、私の父は、ファミリーは、この人に入ってる血と同じ血に滅ぼされたと思うと。

でも本当は知ってる、彼自体に罪はない。私の方が、行き場のない怒りを彼に押し付けているのだ。

「私たちは、貴方方ボンゴレを敵と見做し攻撃します。…これ以上関わらないでいただきたい」
「……それが君の答えなんだね」

「さあもうお引き取りを。もうボスは貴方方とは関わらないとおっしゃった」
「……行くよ隼人」

渋々ながら綱吉は帰っていった。1回だけこちらを振り返った彼の瞳は、淋しげだった、気がする。