「ボス…っ」
「分かってる。これはただの序章に過ぎないことくらい」

心配そうに嵐の守護者が美々を見遣った。暗い瞳を眼下に向ける彼女は、ただ下に見える屋敷を見ていた。崖っぷち、と呼べる場所だからかバタバタと美々の羽織る黒いジャケットがはためく。

「私たちの復讐は、これから始まるのよ…」
「ボス、全員配置につきました」
「そう……。じゃあ、始めましょうか」

そう言って高い場所からなのも関わらずそこから飛び降りた。はぁ、とお転婆すぎる新しいボスに一抹の不安を抱きながらも彼も敬愛すべきボスの後を追いかけるように地面を蹴った。


狙うは、眼下の屋敷。ボンゴレファミリーの傘下である中小ファミリーだ。



***



綱吉は京子とよく一緒にいることが多かった。周りからは2人は付き合っているのではないかとも言われていたが、実際はそうではなかった。ぽっかりと穴のあいた綱吉をサポートしてるのが京子だった。

「ツナくん、次は移動教室だよ」
「……うんそうだね」

京子はため息をついた。もしかしたら、と考えてた自分は甘かったようだ。ツナくんと、美々の間には強い絆があったようだ。それが例え裏切られたような形でも中々崩れ去らないほどに、強く強く。

もう移動しようと2人が準備していると、バタバタと廊下から走る音がして獄寺が教室に飛び込んできた。

「十代目!」
「…獄寺君?どうかしたの?」
「同盟ファミリーがネオストラの襲撃にあいました…壊滅状態です」
「!!!」

驚いてまだ報告を続ける獄寺や心配そうに見つめる京子を無視して綱吉はリボーンに電話をかけた。本当なわけ、ないよな…美々っ。

「リボーンっ」
「お前も聞いたか、ネオストラの話は」
「……そんな、本当だったのか……」
「九代目は全面的にお前に任せるそうだ。武力行使も仕方ないと認めてるぞ」
「……守護者を集める、リボーンも来て」

綱吉はどうしたらいいか分からなくなかった。なぜ、美々は俺の仲間とも言える同盟ファミリーを攻撃したのか。戦い、になるのだろうか。

彼女だけは、傷付けたく、ない。